元気&HealthのJunchanのblogにご訪問ありがとうございます。医療スタッフのメンタルパートナー かたよし純子です♪ 今週もミネラルが関係する題材を取り上げます。頸部が腫れていることで気づき甲状腺?と思うことや、バセドウ病、橋本病ということを聞いたことがあるのではないでしょうか。甲状腺疾患は、女性に多く見られます。初回は、内分泌腺としての甲状腺の概略から「甲状腺ホルモン」をまとめていきます。そして、すぐ側にある副甲状腺は、甲状腺のおまけではありません。「甲状腺」ということばが使われていますが、まったく別の器官で上皮小体とも言われています。この副甲状腺ホルモンにも今回はプラスαで触れておきますので合わせてぜひ、お読みください。
1. 甲状腺機能を知り、理解できるためのポイント3つ
1-1 甲状腺大きくないけどスグレモノ、その位置や大きさ
1-2 ヨウ素が材料、全身の細胞に関係する甲状腺ホルモンとは
1-3 甲状腺ホルモンの調節のメカニズム
今日のプラスα
2.甲状腺とは関係ない?! 米粒ほどの副甲状腺とは?
3.体内のミネラルバランスに関係する副甲状腺疾患
生理検査アティテュード®からのメッセージ
・『その検査は誰のため?』プラスの臨床検査を常に意識する
1. 甲状腺を知りましょう!理解のポイント3つ
1-1 甲状腺大きくないけどスグレモノ、その位置や大きさ
初めに甲状腺の位置関係とその大きさから見ていきましょう。
◯甲状腺、女性と男性ではやや異なる位置
甲状腺が頸部にあることはすでに多くの方がご存知かと思います。
●甲状腺の位置と形状
甲状腺は、気管の全面から取り巻くように位置し、両葉の上極には甲状腺軟骨、下極は第5~6気管軟骨あたり、頸のつけね辺りになります。喉仏のすぐ下あたりで、男性は、喉仏のために女性に比べてやや低い位置になります。
楕円形をした右側を右葉、左側を左葉と、右葉と左葉は峡部とでつながり両葉で見ると、蝶が羽を広げたような形状をしています。両葉の外側は、総頸動脈、内頸静脈が走行し、峡部の背部には、気管、気管の左側には食道が走行します。
ちなみに、甲状腺の栄養血管は、上部からは外頚動脈から分岐した上甲状腺動脈、下部からは鎖骨下動脈から分岐した、下甲状腺動脈となります。
<甲状腺 Thyroid>
●甲状腺の大きさ
成人の甲状腺は、横径1~2cm、縦径4~5cm、厚み1~2cm、峡部厚は4mm程度です。甲状腺の重量は、約20g程度女性よりも男性の方がやや大きく、おおよそ男性:18~20g、女性:15~18gくらいです。右葉は左葉よりやや大きめです。
甲状腺は、頸の真ん中に位置するため、腫れてくると手で触れる位置にあります。健診で医師の問診のときに、触診で頸部を触られたことがあるのではないでしょうか。大きく腫大すると見た目にも腫れが分かることもあります。
<甲状腺エコーでの計測>
1-2 ヨウ素が材料、全身の細胞に関係する甲状腺ホルモンとは
甲状腺は、体の新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを作る臓器です。ヨウ素は、甲状腺ホルモンの材料となります、
◯身体に必要なホルモンを作る甲状腺
甲状腺は、ホルモンを作る内分泌器官のひとつで、ヨウ素を材料とし、甲状腺ホルモンを作ることが甲状腺の働きです。甲状腺ホルモンをつくるための材料として、食物(主に海藻類)などに含まれるヨウ素を必要とします。
甲状腺ホルモンが使われると、ホルモンに含まれるヨウ素が放出されて甲状腺に戻り、甲状腺ホルモンをつくるために再利用されます。甲状腺は血液中のヨウ素濃度が高くなると、甲状腺ホルモンの分泌をやや減らします。
人の体ではさまざまな種類のホルモンが作られています。
ホルモンを作る臓器を内分泌器官といいますが、甲状腺は内分泌器官のひとつであり、食物(おもに海藻)に含まれているヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを作る機能をもっています。
◯甲状腺ホルモン(Thyroid hormone)とは
甲状腺ホルモン は、甲状腺から分泌され、ほぼ全身の細胞に作用し、細胞の新陳代謝を上昇させる機能を持ち、基礎代謝量を維持し、促進するホルモンです。
甲状腺ホルモンは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の2種類のホルモンがあります。
- T4 サイロキシン :4つのヨウ素を持つ
- T3 トリヨードサイロニン:3つのヨウ素を持つ
●T3は、T4から作られる
T4よりもT3のほうが、数倍効率が高いとされますが、甲状腺でつくられるおもなホルモンは、T4です。T4は、ホルモンとしての機能効果がわずかです。T4は、肝臓やその他の組織でヨードがひとつ外された状態となり、さらに活性の高いT3に変換され、T4はT3の前段階といえます。体内でのエネルギーの必要量などさまざまな状況に応じて、その変換量は、バランスが取られています。この機能には、脳の下垂体が作用し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が関与しています。血液中にあるT4とT3は、サイロキシン結合グロブリンというタンパク質に結合して運搬されています。タンパク質と結合していない甲状腺ホルモンを遊離型のFT4とFT3と言われ、この遊離型のホルモンを検査では測定します。
甲状腺ホルモンはおもに2つの方法で代謝速度に大きく影響しています。
- ほぼ全身の組織、細胞に影響しタンパク質の産生を促す
- 細胞が使用する酸素の量を増やす
甲状腺ホルモンは、心拍数、カロリーの消費速度、皮膚の再生、成長、熱産生、妊孕性、消化など非常に多くの生命活動に関与し、影響しています。腎臓にも作用し、ナトリウム再吸収の促進にも関係しています。その他、胎児の脳や身体の発育、軟骨や骨の生成、成長ホルモンの合成など子どもの成にも関係しています。
この甲状腺ホルモンは、ヨウ素が材料として生成されます。ヨウ素が人の身体に大切なミネラルだということがよく理解されたでしょうか。
◯全身に作用する甲状腺ホルモンの働き
甲状腺ホルモンは、新陳代謝に関与する機能を持ちます。身体の発育・成長を促進し、必要なエネルギーを産生するための機能を有し、人の活動には欠かせないホルモンです。
人はエネルギーを食物として摂取されたタンパク質、脂肪、炭水化物は代謝され、体の組織を作る材料や体を動かすエネルギー源として利用されます。甲状腺ホルモンは、このタンパク質の合成を促進し、成長ホルモンの分泌を刺激し、組織や細胞の成長には不可欠なホルモンとされています。胎児の発育や子どもの成長にも欠かせない重要な役割を担っています。甲状腺ホルモンにはこのような新陳代謝の過程を刺激し促進する作用があります。このように甲状腺ホルモンは、全身すべての細胞に作用するとされています。
甲状腺ホルモンの働き
全身の細胞の新陳代謝を促進しエネルギーを産生します。脳の活性化を促し、交感神経の作用を高め、体温調節にも関与、心臓に作用し、心拍数・心拍出量の調節を行い、消化機能に作用しています。さらに骨がカルシウムを取り込む働きを助けて骨の強化に役立つカルシトニンというホルモンをつくります。
◯甲状腺ホルモンのバランスが崩れると
●甲状腺ホルモンが低下すると
甲状腺ホルモンは基礎代謝を亢進する機能をもちます。エネルギー消費を増加させる作用を持つホルモンです。そのため、甲状腺機能が低下し、ホルモン分泌が低下すると、そのため甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素が不足すると、基礎代謝が低下し、寒く感じたり、体重が増加したり、エネルギー不足となり、疲れやすいというような症状がみられます。
●甲状腺ホルモンが増えすぎると
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態になると、発熱や甲状腺腫、聞いたことがあるかも知れませんが、バセドウ病を発症することがあります。
次回のブログでまとめていきますが、甲状腺ホルモンは不足すると、身体の恒常性維持すステム(ホメオスタシス)は、もっとホルモンを分泌させようと作用し、甲状腺が腫大し、甲状腺腫を発症することもあります。
この機能を維持する下垂体を次のところでまとめていきましょう。
1-3 甲状腺ホルモンの調節のメカニズム
甲状腺ホルモンが常に体内で一定にバランス良く機能できるように、調節をおこなっています。その機能を司るのが、脳の下垂体です。下垂体の働きもここでまとめておきたいと思います。
◯甲状腺を調節する脳の下垂体の働き
体内では、血液中の甲状腺ホルモンが常に一定の値を維持できるよう、脳の下垂体が調節をおこなっています。
●甲状腺刺激ホルモン(TSH:thyroid stimulating hormone)とは?
脳の下垂体前葉、甲状腺刺激ホルモン分泌細胞から、甲状腺刺激ホルモン:TSHが分泌され、甲状腺を刺激し甲状腺ホルモンの分泌を促します。
●甲状腺ホルモンの分泌調整
このTSHは、視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)というホルモンにより分泌が促されています。
甲状腺ホルモン(T4、T3)からの情報は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)に対して分泌が抑制されています。さらに、甲状腺ホルモン(T4、T3)は、視床下部にも働きかけTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌も抑制するという、ネガティブフィードバックがあります。
血液中のT4,T3が過剰になると、下垂体から出されるTSHの分泌が抑えらますので、T4,T3の分泌は減少します。逆に血液中のT4、T3濃度が低くなると、TSHの分泌量が増えてT4、T3の分泌を促そうとします。こうした仕組みをフィードバック機構といいますが、これによって血液中のT4、T3の量は、常に一定の範囲を維持できるように調節されています。によってホルモンとしての働きを発揮するようになります
まとめると
- T4(甲状腺ホルモン):甲状腺のみで合成
- T3(甲状腺ホルモン):肝、腎、筋肉、中枢神経系などでT4から生成、T4の約10倍の生理活性がある
- TSH(甲状腺刺激ホルモン)下垂体から分泌 :甲状腺ホルモンの合成・分泌の促進
- TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)視床下部から分泌:甲状腺ホルモンの抑制と活性
人の体内では、このような甲状腺ホルモンの量を調節するために複雑なメカニズムが機能しています。甲状腺ホルモンのT4とT3は、遊離型のFT4、FT3が視床下部と下垂体に抑制作用を働きかけTSH、TRHの分泌を調整しています。
FT4・FT3は、視床下部に作用し、TRHの分泌を抑制し、その抑制機能は、下垂体に作用して下垂体からのTSHの分泌を調節しています。このように、甲状腺ホルモンのほとんどはタンパク質と結合していますが、一部、遊離型のFT4、FT3としてさまざまなホルモン機能を担っています。
<甲状腺ホルモンの分泌調整>
※参考サイト「甲状腺刺激ホルモン」Wikipedia
2.甲状腺とは関係ない?! 米粒ほどの副甲状腺とは?
副甲状腺は、甲状腺の周囲に位置し、「甲状腺」という名称がつくのですが、甲状腺とは関連性は無く、副甲状腺ホルモンを分泌している内分泌腺です。
◯副甲状腺:上皮小体の位置とサイズ
甲状腺の超音波検査を行っていると、ごくまれに、腫大した副甲状腺が描出されることがあります。
正常の副甲状腺は、サイズは平均3×5×1mm、重量30~40mg、米粒ほどの大きさとよく表現されます。甲状腺の後背部に位置し、脂肪組織に富む組織です。頸部超音波検査では、極小で、甲状腺や周囲脂肪組織とのエコー差がほとんどなく、正常サイズのものは通常、観察困難です。
甲状腺の左右に2個ずつ計4個位置します。まれに5~6個見られることもあります。パラトルモン (上皮小体ホルモン、副甲状腺ホルモン) を分泌しています。
●副甲状腺が描出される場合とは?
正常のサイズが、極小となる副甲状腺が描出される場合は、通常、腫れている状態となります。腺腫や過形成の場合、明確な被膜構造として見られますので、甲状腺と鑑別され、超音波検査で描出することができます。
<副甲状腺の超音波イメージ>
◯副甲状腺ホルモンの機能とは?
副甲状腺ホルモンは、(parathyroid hormone:PTH)、上皮小体ホルモンとも呼ばれます。
前回のテーマでもお伝えしたカルシウムの身体での機能は、骨の材料としてはよく知られていますが、心筋も含める全身の筋肉を収縮させる機能や、血液凝固にも関与しています。また、脳細胞の機能にもなくてはならないミネラルです。PTHは、血中のカルシウムの代謝の仲立ちのような働きをしていて、血液中のカルシウム濃度を増加させる機能を持ちます。副甲状腺ホルモンは、ビタミンDとともにカルシウムとリンの代謝を調節する機能を持ちます。
さらに、カルシウムの方にもPTHの分泌を調節する機能をもちます。血液中のカルシウム濃度が低下すると、下がるとPTHの分泌が亢進しカルシウム濃度を維持するように機能します。
逆に血液中のカルシウム濃度が高すぎると、PTHの分泌は減少し、血中カルシウム濃度を低下させるように機能し、血液中のカルシウム濃度を一定に保つように働きます。
ちなみに、甲状腺から分泌されるカルシトニンはカルシウムを減少させるように働きます。
※関連ブログ「骨を構成する多量ミネラル」「CKDのステージと対応その2」
3.体内のミネラルバランスに関係する副甲状腺疾患
副甲状腺も、副甲状腺ホルモン:PTHの分泌し体内の恒常性維持に関与しています。このPTHのバランスが崩れることにより、さまざまな症状が引き起こされることになります。
◯副甲状腺機能亢進症とは
副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモン:PTHが過剰に分泌されることにより引き起こされます。発症の原因で区別され、副甲状腺の異常による原発性副甲状腺機能低下症と、カルシウム代謝異常による二次性副甲状腺機能亢進症、(または続発性副甲状腺機能亢進症)に分けられます。
副甲状腺機能亢進症
- 原発性副甲状腺機能亢進症:副甲状腺の異常が原因
- 二次性副甲状腺機能亢進症:カルシウム代謝異常が原因
それぞれの概略をいちおうまとめておきたいと思います。
◯原発性副甲状腺機能亢進症とは
原発性副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺そのものの機能異常が原因とされ、副甲状腺ホルモンの過剰分泌が生じている状態です。副甲状腺に発症した、腺腫やがんなどの腫瘍や過形成により、PTHが過剰分泌となり、血中カルシウム濃度を必要以上に上昇させ、多飲、低張性多尿、骨密度の低下、膀胱結石などの症状が引き起こされます。
副甲状腺ホルモン:PTHは、身体にはとても大切なホルモンですが、多すぎても身体のバランスを欠くことになる有害な症状をもたらします。この場合、外科的処置以外に根治させることはないとされ、副甲状腺の摘出が適用されるとのことです。
◯二次性副甲状腺機能亢進症とは
副甲状腺以外の疾患が原因となり、PTHの過剰分泌が原因となります。
その原因として、カルシウムとリンの摂取バランスの不均衡、くる病などのビタミンD代謝異常や欠乏などが原因とされる低カルシウム血症からの副甲状腺への過剰刺激などが原因とされます。
●腎性副甲状腺機能亢進症
二次性副甲状腺機能亢進症の原因として、腎性副甲状腺機能亢進症があげられます。慢性腎臓病により、腎機能低下でリンの排泄やビタミンDの活性化が低下します。その結果、腸管からのカルシウム吸収が低下、リンの上昇が血中で起こり、低カルシウム血症となるために副甲状腺を刺激、PTHの分泌が促進されることになります。長期人工透析されている方に多くみられるのは、長期間にわたり、過剰刺激され続けた副甲状腺が腫大することにより、血中カルシウム濃度に関係なくPTHが過剰分泌されることになります。
※関連ブログ「腎臓のはたらき、機能を知る」
◯副甲状腺ホルモン過剰分泌の症状とは
PTHの過剰分泌は、骨から血中へのカルシウム吸収を亢進させるために、骨密度が低下するため骨がもろくなります。線維性骨炎を引き起こし、骨折の原因となります。異所性石灰化という状態、さまざまな場所へのカルシウム沈着を招き、動脈硬化や心臓弁膜症、関節炎などの疾患の原因となります。
軽度のカルシウム濃度の上昇では、ほとんど症状としては見られることは無いようですが、さらにカルシウム濃度が上昇することで、筋力低下、イライラ感、不眠、掻痒感、倦怠感や消化管症状とされる、食欲不振、嘔吐、便秘、消化性潰瘍による腹痛、さらに体重減少などの症状がみられることがあります
◯副甲状腺機能低下症
副甲状腺機能が低下すると、PTHの生成、分泌が減少し体内のPTHが減少し、血中のカルシウム濃度が低下してしまいます。低カルシウム血症や高リン血症などの異常を招くことになります。副甲状腺機能低下症は、PTHの欠乏となりますが、その原因としては自己免疫疾患や甲状腺摘出時に誤って、副甲状腺切除や、損傷でも生じることがあるとされるようです。
また、特発性甲状腺機能低下症という疾患がありますが、副甲状腺機能低下症の中で原因が不明瞭なものをいいます。
●低カルシウム血症で起きることがあるテタニー
低カルシウム血症は、テタニーと呼ばれる症状を引き起こすことがあります。
テタニーは、低カルシウム血症・低マグネシウム血症などにより、血中のカルシウムの減少によって起こります。神経や筋肉の異常興奮により、筋肉のけいれんが引き起こされます。軽症では、知覚神経症状となる口周囲や、指先のしびれ感、ピリピリ感としてみられますが、症状が強くなると手足の強い拘縮が起こり、手足が数分間屈曲するような症状もみられます。さらに重症化すると、呼吸筋や咽頭筋などの全身の筋肉症状に及びます。
※情報関連サイト「副甲状腺機能亢進症」Wikipedia
生理検査アティテュード®からのメッセージは、比較的若い検査技師向けに私からのメッセージとして書いていますが、臨床検査を受けて戴く側の立場でもぜひ知っていて欲しいことして、社会に向けてのメッセージです。私の医療者としての経験からみなさまへの「医療の在り方」としてのメッセージです。
生理検査アティテュード®からのメッセージ
『その検査は誰のため?』プラスの臨床検査を常に意識する
私が勤務していた総合病院では、透析科がありました、副甲状腺の腫大を確認する機会も比較的多くありました。
「見たこと無いから出来ない...」
「勉強していないから無理...」
超音波の解説書を見ると、副甲状腺は「通常では描出されない大きさ」と確かに書かれているものもあります。慢性腎臓病との関連性もお伝えしたように、透析科があると、「副甲状腺を見て欲しい」そんな依頼もよくあります。やったことがある人がたまたま休んでいたら、断ってしまう。そんなこともよく聞きます。それが最上の選択だと思いますか?
◯プラスのチャンスを活かすこと
よく、依頼された部分の臓器、領域しか検査しかしない、見ないということを言われます。頸動脈のエコーの依頼では甲状腺は見ない、甲状腺に所見があっても記載しない。健診の腹部エコーでは下腹部は見ない、ということです。
私のアティテュードでは、
「受けて戴く方の笑顔につながる検査を行うこと」
この言葉が私の検査の前提にあります。
人の身体と心はつながっています。「上腹部が痛い」という依頼でも下腹部まで見ます。泌尿器科の依頼で「腎臓と膀胱」それでも、肝胆膵も見ます。健診では、下腹部まで必ず見ます。
「沈黙の所見があるかも知れない。何かが隠れていたら・・・」
症状のないところに重大な所見が隠されているという可能性は、決して0ではありません。1週間後、1ヶ月後に、沈黙の所見が表に出現し、「あの時見ていれば...」「あの時指摘していれば...」こんな後悔は、検査技師として絶対にしたくないからです。
特に悪性所見の場合は、あの時プローベを当てれば見つけることができたはずなのに、そんな時、絶対に後悔すると私は思うからです。単なる私の傲慢さかも知れませんけれども。
◯自分から作る学べる関係性
頸動脈を見ると、シェーマで示したように、解剖学的に接しているわけですから、必然的に甲状腺も見えてしまいます(笑)明瞭に甲状腺が腫大した所見や、腫瘍を見ることも、があることも思っている以上に経験します。頸動脈エコーの依頼を受けることで、甲状腺もスクリーニングすることで、自分自身もスキルUPすることができるのです。分からなければ、調べる、主治医に確認するなどの行動を自分から、積極的に行うことも大切です。
見たことのない依頼に対して、仕事が増えるから、面倒だからそんな無意識もあるのかも知れません。でも、行動した分は、すべて自分自身のスキルにつながります。
頸動脈の依頼のときは、必ず甲状腺も確認し、周囲のリンパ節の腫大も有無も確認します。リンパ節の腫大は、疾患がある時の身体の何らかのサインにつながるからです。
◯偶然見つけた重篤な所見もさまざまです
膠原病の方だったかと思います。主訴は忘れてしまいましたが、主治医からの依頼は、甲状腺を見て欲しいとのことでした。甲状腺をスキャンすると、頸動脈も頸静脈も描出されます。
内頚動脈が完全に閉塞していたという所見を見たことがあります。目立った症状もなく超音波検査で偶然に発見された所見でしたが、脳梗塞などの危険な疾患に移行するリスクが高いとされます。その後、大学病院に紹介されて、治療に至ったと主治医から聞きました。その他、症状の無い段階での重篤な所見は、思いの外多く経験することがあります。臨床検査のプロとして受けて戴く方の笑顔につながる臨床検査を考え実践していくこと。そしてそれを私は拡げ、伝えていくことが自分の役割だと思っています。
◯甲状腺と一緒に見て欲しい、頸部リンパ節
また、頸部は多くのリンパ節がある場所です。高齢者の術前スクリーニングで頸動脈エコーの依頼を受けたときのこと、左鎖骨下のリンパ節転移(ウィルヒョウのリンパ節)が描出された経験がありました。胃がんの遠隔転移としてよく知られた場所へのリンパ節転移でした。ほんの少し、スキャン範囲を拡大することで描出されることがよくあります。鎖骨下は、頸動脈の分岐部となりプラークの好発部位でもあります。そこまでスキャンしている施設は少ないのかもしれません。しかし、甲状腺を見る時は、周囲のリンパ節の腫大を見ることは絶対に必要です。私は常にそう考えています。
プラスの情報、当然のように得られると思われる情報は、伝えることが臨床検査の義務だと私は考えています。そのことが、受けて戴く方の笑顔につながる報告書となるように。次に繋がる情報をつなげる努力を行うことが臨床検査に求められる「在り方」だと私は常に思っています。
Pure Medical attitude
生理検査アティテュード®
今日のまとめ
- 甲状腺は、頸部の気管全面に位置し、ヨードを材料に甲状腺ホルモンを分泌する内分泌腺
- 甲状腺ホルモンは、全身の細胞に関与し、生命活動には欠かせないホルモン
- 甲状腺ホルモンは、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンで調節されている
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情報参考サイト・参考資料
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生理検査アティテュード®
代表 かたよし純子 Junchan♪ ※自己紹介はこちらから
臨床検査技師/超音波検査士/健康管理士一般指導員/健康管理能力検定1級/介護予防運動指導員/米国NLP協会認定NLPトレーナー
THINK YOUR LIFE -ミドルエイジとともに-side by side-
共同代表 Junko Katayoshi
今日も最後までありがとうございました。
☆アンコモンセラピー読書会☆
毎月、大崎ゲートシティ スターバックスコーヒーで開催しています。ミルトン・エリクソンの戦略的手法を紹介されている名書「アンコモンセラピー」この読書会を毎月開催しています。次回は、8月20日(月)となります。Facebookページのイベントサイト or HPから