『元気&HealthのJunchanのblog』にご訪問ありがとうございます。医療スタッフのメンタルパートナー かたよし純子です♪検査技師目線で簡単理解ができる健康情報を多くの人に届けたい。そんな目的で週3回発信しています。
先週、今週は、おもに健康診断で行われている臨床検査についてお伝えしました。今日は、その4回目最終回、私がいちばん長くかかわっている生理検査をまとめていきましょう。小学校へ入学すると心電図検査は必ず受けていると思います。さらに呼吸機能をみる肺活量測定や腹部超音波検査で何がわかるのかその検査目的と臨床的意義をできるだけ簡単にまとめていきたいと思います。最後の補足情報は、私なりの健診検査の在り方をお伝えいたします。合わせてぜひともお読みください。
1.健診で実施される3つの生理検査
1-1 心臓のリズムや心筋の状態がみえる心電図
1-2 肺機能が分かる、2つの肺活量、肺機能検査は大変ですよね
1-3 くすぐったいけど、いろいろ分かる 腹部超音波検査
今日のプラスα
2.生理検査とは? 超音波検査士からのお願いです
3.「まとめ」健診の在り方とは?問診を活用していますか?
生理検査アティテュード®からのメッセージ
・在り方への考え方
生理検査とは?
臨床検査の中でも、人の身体に対して、
直接的に検査を行う
*健康診断では、健診内容により項目が異なります
1-1 心臓のリズムや心筋の状態がみえる心電図
心電図(英: Electrocardiogram, ECG、独: Elektrokardiogramm, EKG)は、略してECG、EKGともよく言われます。心臓の電気的な流れを波形にして記録したものです。
【心電図は、心臓の電気信号】
人の身体、細胞は常に弱い電流が流れています。心臓の筋肉の状態や不整脈(脈がバラバラ、不規則な状態)など心臓疾患の診断と治療に役立てられます。
両手首、両足首、胸に6個の電極を装着して微弱な電気の流れを記録します。四肢6誘導、胸部6誘導の12誘導記録します。心臓の動きを見るための電気の流れを多方向から記録するためです。皮膚と電極間の電気を通りやすくするために少し湿った感じがします。最近では、電極にペーストまたはジェリーパッドなどを用いる施設がほとんどです。装着時にヒヤッとするかと思います。
【心電図の波形の意味】
心電図の波形、医療系のTVドラマなどでよくモニターにも出てくるので、馴染みがあるのではないでしょうか。先週スタートした月9ドラマ「コードブルー」の新シリーズ、私もしっかり見ております。なかなかの高視聴率だったようですね~(今晩9時からです!笑)
心臓の1回の収縮で心臓から送り出される血液量(1回拍出量)は、安静仰臥位で約70ml(正常値は60ml~130ml)といわれています。その1拍を振幅する波形に表したものが心電図です。この波形には、それぞれ名前がついています。 ※下記に波形を示しましたので、ご覧いただければと思います。
- P波 心房の収縮
- QRS波 心室の収縮
- T波 心室の収縮(興奮の消失)
〔U 波〕
上記以外に、T波の後に、U波という波が出現することがありますが成因は不明です。心電図記録時にも時折見られることがあります。陽性でT波の高さの5~50%の範囲内ならば正常範囲とされています。T波より高いU波は、異常とされ低カリウム血症・QT延長症候群・ジギタリスなど、陰性U波も異常とされ、心筋虚血、心肥大、高血圧などでみられます。
【刺激伝導系】
心臓の刺激が伝わる過程を刺激伝導系といいます。
上大静脈と右心房の境界付近にある洞房結節といわれる部分から刺激が発生します。洞房結節で発生した刺激は、右心房の壁を波状に伝わり、心房が収縮し、右心房の下方で心室中隔(右室と左室の間の壁)近くにある房室結節 伝えられます。房室結節を出た刺激伝導系は、ヒス束と呼ばれる部分を介して心室中隔に伝えられます。心室中隔にまで達したヒス束は、左脚と右脚に分岐し、左脚はさらに前枝と後枝に分岐する。左脚と右脚の先、分岐を繰り返す部分はプルキンエ繊維 と呼ばれ、心室心筋に刺激を伝導し収縮させます。
【不整脈】
心電図はこの刺激を波形に表したものです。P波が、等間隔に出現している状態では、心臓は、リズミカルに拍動している状態となります。R-R間隔も一定となります。健康な人でも、呼吸により、P波の間隔がことなることや、体調によって心臓の不規則な収縮(期外収縮)が起こると、R-R間隔がバラバラ(QRS波に乱れ)となり不整脈の状態になります。
〔心房細動〕
洞房結節の刺激(P波)がなくなり、心房が震えている状態(心房が不規則に収縮している)となり、あちらこちらから異常な刺激が出されている状態が心房細動となります。P波が消失し、細かい揺れのような波形が生じて、R-R間隔がバラバラになります。異所性の刺激が生じる場所により、その部位によってもさまざまに波形が変化します。
〔刺激伝導障害〕
房室結節の刺激がヒス束よりも下部で一時的に途切れた状態を脚ブロックといいます。左心室内で起これば左脚ブロック、左脚ブロックは心不全が疑われます。右心室内で起これば右脚ブロックといいます。右脚ブロックは心臓に異常がなくても起こる場合があります。
これ以外にも非常に多くの心電図波形異常があります。刺激がうまくつながらない場合などです。同じ心電図は、ないと言っても良いほど異なります。心筋の中を刺激は伝わっていきます。心筋虚血などで、障害があると、その障害の部分で、刺激伝達の遅延が生じ、その部分で心電図波形が変化(虚血を示す)をします。
心電図のさまざまな変化は、このようにさまざまな心臓の異常を示してくれるのです。でも、ここで気をつけなければならないことは、100%心臓の異常を心電図が伝えてくれるわけではないということです。心電図が正常だから心臓に問題がないとは言い切れないのです。
事実、心筋梗塞を発症していても、記録のタイミングやその他の影響もあり、ほとんど波形に変化がみられない時間帯(波形の経時変化)もあるということを聞くし、実際そのようなことも記録しています。現れている胸部症状などを侮らない、受けとめることがまずいちばん大切です。
病院などで記録される心電図は、ほんの短い記録時間です。労作時、胸に違和感があった、急に脈が飛んだ、動悸を感じたなどの症状のときの心臓の記録、心電図検査時に拾えないこともよくあります。気になる症状があった場合は、必ず受診して、他の検査を受けることをおすすめします。健診時に何もなかったからと安心することがあっても、再度症状があった場合には、きちんと専門医に相談してください。
心電図は非常に奥が深い検査です。理解しようと苦心しますが、なかなかの強者です。
<Electrocardiogram ECG>
心電図は、心臓全体を捉えて、はたらきを調べることができ、心臓病の発見や診断、病状の把握、治療効果の確認、薬の副作用の発見などには欠かせない検査です。
心臓のポンプ機能、収縮・拡張は正常か、心筋に酸素と栄養を送る冠状動脈の働きはどうか(動脈硬化などがないか)、電解質(カルシウムやカリウムなど)の異常もわかります。
【検査方法】
心電図検査、小学校入学時に今は必ず検査しているのではないでしょうか。特定健診にも含まれる検査です。
〔安静時12誘導〕
- 検査ベッドに仰向けに寝ていただきます。
- 力を抜くようにして、ゆっくりとした呼吸を繰り返してください。
- 通常1~2分で記録はおわります。
記録は、だいたい今の心電計ですと、四肢6誘導、胸部6誘導ずつ2回の切り替えで記録はおわります。
体内を流れる微弱電流を器械で拾い、増幅して波形として記録しているだけなので、身体に電気を流すわけではありません。痛みはまったくなく、何も感じない検査です。
【心電図検査時の注意・こんなときはどうするの】
実際記録時間は短いのですが、何故か長くて不安になったことないですか?それにはさまざまな原因や理由があります。不整脈が見られたときは、不整脈の種類を鑑別しなくてはなりませんので、通常の場合よりも長めに記録します。その他下記のような場合もあります。
-
力が入ってしまう
検査と言われると緊張してしまい、無意識に肩や腕、足に力が入ってしまうと、筋電図(筋肉の緊張の波形を拾ってしまう)が混入し、きれいに記録できません。微妙な計測ができなくなってしまいます。
-
ゆっくりと腹式呼吸を試みる
胸式呼吸になってしまうのも、胸部の電極が揺れることで、心電図の基線が揺れてしまいきれいに記録できません。ゆっくりとお腹で呼吸をするように
-
腰が痛くて、仰向けが無理、痛みがあり、寝ている姿勢が辛い
痛い場所を技師に伝えてください。仰臥位が安静時12誘導の基本ですが、半坐位、側臥位でも記録は可能です。身体の力が抜ける状態を確保することが出来ればそのほうが良い記録になります。先にお伝えしたように、体位により波形は異なりますが、その旨は医師に報告いたします。
-
ドキドキしている、急いで検査を受けに来て、脈が早くなっている
ゆっくりと深呼吸を繰り返してみてください。吐く息をできるだけ遅く、ゆっくり吐きます。子機で心拍が落ち着いてきます。
-
子どもが心電図を取らせてくれない
眠っているときに記録することも可能です。お母さんがいっしょにいる状態でも記録できますので安心できる環境で記録させていただきます。
-
足を骨折してギブス、腕を怪我してしまったけど、片足義足などどうするの?
基本、四肢は手首、足首に電極を装着しますが、ご心配いりません。心電図は、電流の流れの差を見ます。シールタイプの電極などを用いて、上腕や、腰骨のところに装着して記録できます。
【検査結果の判定】
心電図を判定(読影)するのは、医師ですが、検査技師は、記録時に異常心電図にであったときには、すみやかに医師に報告いたします。安静が必要な場合もあります。その判断は、担当技師に委ねられます。きちんと心電図も読める必要があります。
〔心電図異常となる疾患〕
不整脈(多種あります)、心肥大、心筋虚血、心房中隔欠損症、心筋梗塞、拡張型心筋症、心臓偏位、心臓弁膜症、狭心症、電解質失調など
異常が見つかれば、負荷心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査(心エコー)CT、などが一般的に行われます。さらに、心臓カテーテル、心筋シンチグラフィー、冠状動脈造影などが行われます。
1-2 肺機能が分かる、2つの肺活量、肺機能検査は大変ですよね
健診や術前検査で肺活量を測定したこがある方もいらっしゃるかと思います。呼吸のときの呼気量(吐く息)と吸気量(吸う息)を測定し、呼吸の能力を調べることをスパイロメトリーといいます。
喫煙がその原因となるといわれているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)という疾患を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。努力性肺活量を測定することで求められる1秒率の低下で肺機能の状態を知り、喫煙の肺への影響を疑うことができます。
気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患をはじめとする、呼吸器の病気が疑われるときや、その状態をみるときに行う検査です。息を吸ったり吐いたりして息を吸う力、吐く力、酸素を取り込む能力などを調べます。
肺活量VC および 努力性肺活量FVC をはかることで、拘束性障害、閉塞性障害、混合性障害の換気障害の分類ができます。
【肺活量(vital capacity:VC)】
最大呼気位(息をゆっくりと呼出できるまで、最後まで吐ききったところ)から、最大吸気位(ゆっくり胸いっぱい吸い込んだところ)までの吸気量。最大限吸い込んだ後に、肺から吐き出した空気の量です。
〔評価方法〕
年齢、性別、身長から基準値(予測値)を決めます。基準値に対して80%以上を正常とします。年齢と身長によって計算した予測値と比較して、%肺活量として表します。基準値に対してどれくらいの肺活量を持っているのか、機能している肺活量の割合を示す数値です。
〔肺活量の低下〕
拘束性肺疾患を伴う疾患が疑われます。胸膜に関わる疾患、胸郭の変形などの可能性
肺結核、肺線維症、肺気腫肺炎、腫瘍による気管支閉塞、脊椎の変形 など
【努力性肺活量(forced vital capacity:FVC)】
最大吸気位(息をゆっくり最大限吸い込んだ状態)から、できるだけ早く、勢いよく一気に最大呼気位まで吐き切ります。前述の肺活量との違いは、一気に吐き出し切った呼気の量を調べます。ここから求められるフローボリュームカーブや1秒率で、気管支喘息やCOPDの有無が推測されます。
フローボリュームカーブとは、呼出パターンを縦軸に呼気流量(フロー)、横軸(排気量)を示したものです。肺疾患によりこのカーブが特徴的なパターンを示します。
<フローボリュームカーブ>
〔1秒率(FEV1.0%)〕
努力性肺活量(FVC)測定で呼出開始(吐き出し始め)から、初めの1秒間に肺活量全体の何%の息を吐く(呼出)ことができるかをみます。努力性肺活量に対する1秒量の割合を求めます。70%以上を正常とし、1秒率が低下すると、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など気道が狭くなる疾患が疑われます。肺の弾力性、気道の閉塞の程度を示し、弾力性が良く、閉塞がないと1秒率は大きくなります。
〔1秒率の低下〕
肺の弾力性の低下(肺線維症、じん肺、間質性肺炎など)、胸部拡張性の障害(古い胸膜炎)、呼吸運動の障害(筋肉や神経疾患)、閉塞性障害、気道閉塞(喘息、慢性気管支炎、びまん性細気管支炎、肺気腫など)
〔1秒量(FEV1.0 )〕
努力性肺活量の測定で、最初の1秒間に吐き出さすことができる空気量です。この量が性別、年齢、身長から求めた標準値に比べて少ないときは、気管支が狭くなっている可能性があります。気管支喘息のときに気管支拡張剤の吸入前後でFVCを測定し、変化を比較することもあります。
〔1秒量の低下〕
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息など
【気道とは? VCとFVCの違い】
説明のなかで気道の狭窄、閉塞と出てきました。さて、気道とは、肺に通じる空気の通り道。
鼻腔(びこう)・口腔・喉頭(こうとう)・気管・気管支などからなります。
- 肺活量(VC) 肺の空気をたくわえられる器の量の測定となり、
- 努力性肺活量(FVC) 肺につながる気道、つまり空気の通り道の状態をみる検査
このように検査をする場所が異るのです(^^)
【肺機能検査(スパイロメトリー)でわかること】
肺活量VC および 努力性肺活量FVC をはかることで、拘束性障害、閉塞性障害、混合性障害の換気障害の分類ができます。
〔拘束性障害〕
1秒率は正常、%肺活量が80%未満の状態
- 肺の弾力性の低下:肺線維症、じん肺、間質性肺炎など
- 胸部の拡張の障害:古い胸膜炎
- 呼吸運動の障害 :筋肉、神経の病気
〔閉塞性障害〕
肺活量は正常、1秒率が70%未満の状態
気道の狭窄、肺弾性力低下した状態。気管支喘息、COPD、肺気腫など閉塞性肺疾患患者
〔混合型障害〕
%肺活量の低下、かつ1秒率も70%未満の状態
拘束性と閉塞性の両方がある状態です。肺が十分に広がらない、かつ、気道狭窄の状態です。じん肺などがあります。
【肺機能スパイロメトリーの実際】~健康な人でも苦しいですが頑張って!~
基本は、椅子に腰掛けて検査をおこないます。緊張して、肩に力が入ってしまうと、呼吸筋もキュッと緊張して吐き出しにくくなります。肩の力を抜いて背筋を伸ばしておこないましょう。姿勢により、肺活量も変化します。
〔肺活量(VC)測定〕
- 鼻をノーズクリップでつまみます(鼻腔からの空気を遮断します)
- マウスピースをくわえたまま、口だけで楽な呼吸(いつもの呼吸)をしていただきます
注)口元をきちんと塞がないと正しく測定ができません
- 「そのまま吐き切ります」の声かけとともに、最大呼気位まで吐き切ります
※最大呼気位とは、もうこれ以上吐くことが出来ないと思うギリギリのところまでです。かなりしつこく声掛けされると思います。頑張りましょう
- 「今度は大きく吸って」と声がかかります。息を最大吸気位までグーっと吸います
※最大吸気位とは、もうこれ以上吸うことが出来ないと思うギリギリのところまでゆっくりズーっと吸います
- 「吐いてーー」と言われたら、再び最大呼気位まで吐き切ります
- 「吐けなくなったら吸います」これで終わりです
※2回目の呼出も、1回目の呼出位置まで吐ききるように頑張ります
〔努力性肺活量(FVC)測定〕
1. 鼻をノーズクリップでつまみます
2. マウスピースをくわえたまま、口だけで楽な呼吸(いつもの呼吸)を複数回していただきます
ここまでは肺活量のときと同じです。
3.「今度は大きく吸って」と声がかかります。息を最大吸気位まで速やかにグーっと吸います
3.「吐いて!」の声かけとともに、一気に最大呼気位まで吐き切ります。
※ここでもかなりしつこく、まだまだと声掛けされると思います。頑張りましょう。
4. 吐ききることができたら、吸って終了です。
呼吸機能検査は、上記のように被検者さまの努力が問われる検査です。非常に苦しく、頑張りが必要とされます。声掛けをさせて戴く検査技師も一生懸命に声をかけせていただいております。いっしょに検査をしているのと同じくらい頑張って声をかけさせていただいております。苦しいのに!きっと鬼かと思われる方もいるのではないでしょうか。(苦笑)
でも、やる気のない声で、吐いて~~と言われてもちゃんとデーターが正しく出ません。検査技師も必死なのだということをご理解ください。私はそう思いながら呼吸機能検査を多くの方に検査させてもらいました。患者さまと共に検査をしているつもりなのです。
【こんな時はどうするの?】
-
顔にマヒがある
脳梗塞の後遺症などで顔面マヒがあるなどの理由で、口元が上手く塞げないなどの症状がある方は、お声掛けください。通常ディスポタイプの紙性を使うのですが、より呼気が漏れにくいシリコン性タイプのマウスピースもご用意できる場合もあるのでご相談ください。
-
口呼吸が上手く出来ない
マウスピースを加えて練習してから測定することもできます。
-
咳が止まらない
あまり、ひどい時は、日を改めたほうが良い場合もあります。不安がある場合は、依頼医に確認しますのでご相談ください。
その他、気になることがありましたら、担当検査技師に声をかけてみてください。
呼吸機能検査は、酸素交換をしてくれている自分の肺機能を知るための検査です。苦しいですが、測定するときはぜひ頑張って行ってみてください。
そして、喫煙者の方には受けて欲しい、努力性肺活量(FVC)検査、COPDに向かいまっしぐらです。喫煙は、麻薬と同じ働きをしています。健康を手にしたければ禁煙を是非ともおすすめいたします。
※関連blog「私は大丈夫だから...という過信は、通用しない?!」喫煙
1-3 くすぐったいけど、いろいろ分かる 腹部超音波検査
私の大好きな超音波検査です。腹部超音波検査で分かることは、いろいろあります。
上腹部では、肝臓・胆のう・膵臓・脾臓、これに泌尿器科領域の腎臓、下腹部領域の膀胱、前立腺、子宮、卵巣、循環器領域の腹部大動脈、そして、何気に胃、十二指腸、小腸、大腸などなど…
健康診断では、肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓などでしょうか。
腹部超音波検査は、臓器の形態や大きさ、異常なものが出来ていないかなどを見ていきます。分かる疾患も各臓器いろいろあります。
これまでのブログでも超音波に関してさまざま書いてきました。これほど簡便で情報量の多く得られる検査はないと、超音波好きな私は思うのです。
ここでは、健康診断でよく見られる主な臓器の疾患をまとめておきましょう。
【肝 臓】
右側上腹部を広範囲に描出されます。スキャン位置(器械をあてる主な位置)は、心窩部(みぞおち)から左肋弓下(肋骨の下)走査~右肋弓下~右肋間です。
〔よくある所見〕
脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変、肝嚢胞、肝石灰化、肝血管腫など。肝がんもわかりますが超音波検査は、画像診断です。得られた所見から肝がんを疑います、という報告になります。確定診断は細胞診などに委ねられます。
【胆のう】
肝臓で作られた胆汁をためている袋です。なすびのような形状で、肝臓の下にぶら下がっているような感じ、やや右側に位置して、十二指腸に接しています。肝門部といわれる肝臓の血管が集まる部分に総胆管という管も通っていますが、胆のうは、この総胆管につながっています。胆汁は、食後の消化を助けるためにこの総胆管を通って十二指腸に排出されます。
〔よくある所見〕
胆のうポリープ、胆石、胆のう腺筋症、胆のう炎、胆のうがん
天ぷら、卵黄など油物を食べた数時間後、胆石発作を起こすことがあるようです。右季肋部あたりに痛みを感じます。胃や十二指腸の痛みと同じような痛みとしても感じることがあるようです。胆のう炎も右季肋部として圧痛となることが多いようです。発熱をともなうこともあります。
ポリープや胆のう腺筋症は、症状がありません。胆のうがんも症状のないことがほとんどです。
【膵 臓】
膵臓は、心窩部(みぞおち)、胃と十二指腸に接する位置にあります。超音波検査では、体型にもよりますが、肝左葉(肝臓の左側)や胃の背中側に位置し、膵体部がここで描出されます。体部から左側に帯状に脾臓の脾門部(脾臓への動・静脈流入部分)膵尾部が位置します。膵尾部が左側の脾臓まで背中に近い臓器で、膵炎などの場合、背部痛として症状があらわれることがあります。
〔比較的よくある所見〕
膵のう胞、慢性膵炎、急性膵炎、漿液性のう胞腺腫、内分泌腫瘍、膵がん、その他脂肪沈着など
【脾 臓】
脾臓は、左肋間から、左後背部に描出されます。胃の後ろ側に位置し、左側の肺ガスの影響で描出し難かったりします。左腎臓の頭側に描出されます。
〔よくある所見〕
脾腫、脾のう胞、脾血管腫、リンパ腫、脾石灰化 など。
脾腫は、貧血や門脈圧亢進状態のときに見られます。
【腎 臓】
前回の尿検査のところでも少し説明しました。両側腰のあたり、背中に位置にあります。
〔よくある所見〕
腎のう胞、腎結石、腎石灰化、水腎症、水尿管、腎血管筋脂肪腫、腎がん
透析患者さんは、腎萎縮、多のう胞腎など
腎臓は、奇形が多い臓器です。両側の腎臓が繋ながる 馬蹄腎(ばていじん)や重複腎盂、バルタン柱なども健診でみつかります。重複腎盂とは、腎盂(腎臓の真ん中の部分で、腎臓と尿管の接続部、漏斗状に広がっている部分)が真ん中で区切られている状態、小さな腎臓が2個くっついたような見え方です。
腎盂腎炎などもよくある疾患ですが、超音波では、特異的な所見が得られるわけではありません。皮質の部分が多少輝度が正常よりも高くみえるていどのことがほとんどです。
【腹部大動脈】
かなり以前、某局健康番組で、「腹部大動脈もみてください、と検査のときにひとこと言いましょう!」こんな、ことを言っていました。通常、意識レベルの高い検査技師ならちゃんと腹部大動脈は確認していると思います。動脈硬化の様子がわかります。石灰化や蛇行、腹部大動脈瘤など。
腹部大動脈は、大きくなると破裂することもあります。高齢者の検診受診も増え、動脈硬化の確認をすることも大切です。
【その他の臓器】
通常健康診断で記載される内容は、上記までではないかと思います。健診ではさまざまな検査をおこないますので、検査の順番の関係上、尿検査を先に行うことがほとんどです。でも、可能ならば腹部超音波の後に検尿としていただき、実施する技師には、下腹部を見てもらいたいのです。実に多くの疾患が潜んでいることがあります。
上記臓器以外の組織にもさまざまな所見が見られることもあります。肝左葉下面や大動脈周囲のリンパ節腫大、胃や十二指腸の大腸の壁肥厚なども見つかることがあります。
【下腹部領域】
下腹部は、膀胱に尿がたまった状態での検査が望まれます。腸管のガスが邪魔をして、子宮・卵巣・前立腺などを隠してしまうからです。膀胱は袋状になっていますので、膀胱も排尿してしまうことで膀胱内部の観察ができなくなってしまいます。よく検査の前にはトイレを済ませて、と思われがちですが、腹部超音波の検査は、排尿はしないほうがよいです。お腹に炎症がある場合など、腹水が見られる場合がありますが、膀胱周囲は、少量の腹水がたまりやすい場所でもあります。排尿しないほうがよいことが多いのです。
〔膀胱〕
膀胱壁の状態を観察、壁の肥厚、尿中成分の有無、出血や尿結石、膀胱腫瘍など
〔男性 前立腺〕
前立腺肥大、前立腺石灰化、前立腺がんなど
〔女性 子宮・卵巣〕
子宮筋腫、卵巣のう腫などの婦人科系疾患
高齢者は、萎縮や周囲のガスのために描出困難のなることもあります。
【くすぐったいよね、肋間走査】
脇に器械をあてられる時、くすぐったいですよね。言ってください。ちゃんと声掛けしてから当てさせていただきます。押されて痛い時は、痛いといってください。息を止めてと言われて、苦しいけど…言ってください。
初心者ほど、画面に釘付けになっています。息どめしていただいていることを忘れていることがよくあります。言っては失礼…そんなことはありません。言ってあげたほうが、その技師の今後のためだと私は思います。
ゆっくりと深呼吸を繰り返していただくことで、息どめは、ほとんど必要ありません。腹部超音波の場合は、非常に細かな場所や、血流をみる時以外なら呼吸を止める必要はないと私は思っています。
【食事の影響、タバコもNG】
腹部超音波の場合は、食止めをお願いします。胆のうが萎縮してしまうことがいちばんの理由ですが、それ以外でも胃が動き、ガスが発生するからです。心窩部が観察しにくくなるからです。飲み物も基本止めていただきますが、この時期、水分補給は必須なので例外です。喫煙も影響しますので、喫煙は辞めてください。
よく、「朝食を取らずに」と説明されたので、バナナを食べてきました、牛乳飲んできましたと言われる方が…これらは、「NG」です。この時期、ゆるされるのは、水、せめてお茶です。どうぞよろしくお願いたします。
2.生理検査とは? 超音波検査士からのお願いです
私が生理検査を好きな理由があります。人の健康に関われる、病気を持つ人の心に触れ合うことができる。
【生理検査は、直接検査できる良さがある】
私たち臨床検査技師は、医師の依頼のもとに医療行為である検査を行うことができます。指示がないと検査が出来ません。そして、最終診断は医師がおこないます。
よく聞かれます。最近は少なくなりましたが「結果は?」この質問に「お答えできません」「担当医師に聞いてください」というようなことを言われた方も多くいるのではないでしょうか。できれば「説明したい!」ほんとうにそう思います。でも出来ないのです。そこのところをどうぞご理解ください。検査を受けるとドキドキしますよね。心配にも、不安にもなると思います。そのことを十分に受けとめながら私たちは検査を行っています。多くの検査技師がそうであると私は思っています。思うようにしています。もし違ったら私は指導します。
説明が出来ないというもどかしさが、私たちにもあることもどうぞご理解ください。そして、大切なことは「医師からになります」という意味の伝え方も、技師側にはあると思います。そのコミュニケーションの仕方、ことばの使い方、伝え方を私は、医療学生さんや若い新卒技師さんへ伝えていくことを目的としています。
【生理検査アティテュード®】からのメッセージ
在り方への考え方
超音波検査は、見た人の技量によることを否定できない。ということです。だからよい超音波技師を育てることを目的にしています。超音波検査を行う者の感性を育てることをしていきます。超音波技術を育てることは、超音波感性を育てることです。被検者の心にどこまで寄り添うことができるかということです。
私が大切にしていることは、「在り方 Attitude」です。医療の在り方を考え、臨床検査の在り方を考えることができる技師です。検査の在り方とは、被検者の在り方につながります。自分が担当することになった患者さま、受診者さまに感謝して、その方がどんな検査の在り方を望まれているかをきちんと感じられる技師です。人は人と繋がり生きています。検査であうという一期一会の出会いでしかないかもしれません。あなたで良かったと心から思って貰える、感じて貰える検査を常に考え提供できる臨床検査技師を育成します。
再度いいます。超音波検査は、見た人の技量によります。「見えないのはあなたのせいよ」そんな言葉が聞こえてきそうな検査を行っていることも見受けたことがあります。違います!と私は言いたいのです。見る側の努力義務は必ずあります。見えにくい人こそより丁寧に検査を行うことが求められると私は思っています。超音波検査は、見えて初めて所見ととるか、とらないかの段階になります。ですから見えなければ評価できません。正常とも異常とも判断できないのです。
技術の足りない技師は、確認してもらう必要性が生じます。新たなものを育成する義務もあるからです。手軽に行なえ、情報量も得られる検査だからこそ確実なスキルを持つ多くの技師が必要なのです。
超音波を受けて戴くみなさまには、ダブルチェックの機会を若い技師に与えてください。どうぞよろしくお願いいたします。
【健康の会話ができる検査技師】
検査を受ける方への「健康アドバイス」ができる検査技師を育てたい。
こんなことも考えています。先日、文部科学省後援「健康管理能力検定1級」「健康管理士一般指導員」の資格を取りました。
超音波検査をするときには、必ず血液検査の結果や今までの病歴、検査目的を確認します。確認させて戴いた血液検査や病歴などの情報をもとに健康プチアアドバイスが出来たらとも考えています。そしてそんな技師を育成したいとも思っています。これも、私の野望です 笑
3.「まとめ」健診の在り方とは?問診を活用していますか?
【それぞれの業務範囲があります】
先週から、4回にわたり、健康診断でおこなわれている検査技師目線で、臨床検査を中心にまとめてきました。他にも、放射線科で行なわれる、胸部X線撮影、胃透視または胃カメラ(胃内視鏡検査)、婦人科健診(マンモグラフィ、触診、子宮頸がん細胞診)などもあります。
放射線の検査(胸部X線撮影、胃透視、マンモグラフィ)は、放射線技師がおこないます。けっこう、臨床検査技師と放射線技師を混同されている方がいますが、別の国家視覚です。臨床検査技師は、X線を扱うことができません。
そして、医師が行うのが、問診、視診、触診、聴診と内視鏡検査(胃カメラ)、乳房触診、子宮内診と細胞診検体採取です。
【健康診断は、予防医学です】
みなさん、問診をどのように受けていますか?ちゃんと事前問診票に記載していますか?そして日常で気になっていたことをちゃんと伝えていますか?短い時間での問診となると思います。日頃から気になる症状や先週初回にお伝えした血圧測定(家庭血圧)、や、脈拍、脈が飛ぶ(不整脈に自覚)自己血糖や尿試験紙検査などもし、自宅で検査をしたことがあったら、メモをしておいて問診時に担当医師に伝えてください。
「先生は、忙しいから申し訳ない」こんなことを思いながら、何も伝えずに生理検査に回ってこられる方もいらっしゃいます。そして、「お腹で気になることがありますか?」この質問を、腹部超音波検査のとき問いかけると、「実は…」と来院後初めてにつぶやく方もよくいらっしゃいます。気を使っていただいているのですよね。ほんとうにありがとうございます。
病院は、受診していただくみなさまの健康をチェックするところです。身体や心の不安をクリアにする場所でもあり、自分自身と向き合う時間だと私は考えて実践してきたつもりです。私は、医師ではありません。たかだか1人の臨床検査技師でしかありません。でも、検査のプロです。自分の業務範囲内で、医療人として、人間としてきちんと受診者さま、患者さまと向き合いたい、向き合うことができる臨床検査技師を今後育てて行くと決めています。
健診だからこそ丁寧に検査をする必要性を強く感じます。特に長年おこなっている超音波検査は、とくに強くそう思っています。不明瞭な部分を「見えない!」とは、切り捨てたくないのです。見えないからこそ、より丁寧に見る努力をする必要性があると断じて言い切りたいのです。見えないを、見る、超音波検査を実践して、若い技師に伝えていく努力をこれからも続けていきます。
健康診断は、予防医学です。もっと健診を自分自身の健康のために利用することをひとりひとりが意識することが、社会全体がよくなるのではないでしょうか。
【健康とは?】
先週7月18日、聖路加国際病院名誉院長、医学博士 日野原 重明先生が105歳で永眠されました。そのニュースを聞き、驚きと哀しみとで、ことばが出ませんでした。
私が、私の中での医療の在り方に悩んでいたことがありました。NLPを学び、自分の生き方を考える中で、自分が立ち止まってしまった時に、先生の著書を読みあさった時期がありました。そして、そこから新たな模索が始まり、仕事に対する価値観、すなわち医療に対する価値観が大きく180°変わったそのきっかけは、日野原先生の数々のことばでした。
長年勤務した病院を離れることを最終的に決断したきっかけにもなりました。自分らしく何をこのあとの人生で成し遂げたいのか、そんなことを考えるきっかけのお一人が、日野原先生です。
延命治療は望まない。私自身もそう考えます。身体がもし病気になっても健康でいられる。それは大切な意味がこめられています。私ももっと、もっと生き方上手になりたいです
心からのご冥福をお祈りいたします。
みなさんは、健康とは?この質問にどう答えますか?人は、みんなその生涯を終える瞬間を迎えます。最後まで健康でいることが大切です。健康とは、自分らしく生涯を終えることなのかも知れません。
今日のまとめ
- 心電図検査は、スクリーニングの1つと考え、症状があるときは受診が必要
- 頑張りが必要な検査ですが、喫煙者には、ぜひとも受けて欲しい努力性肺活量
- 腹部超音波検査直前の排尿は、出来れば避けましょう。
<関連blog>
- 私は大丈夫だから...という過信は、通用しない?! 2017.3.16
『身体がみえる臨床検査』
- §1 健診結果を読む① 身体の数値 2017.7.17
- §2 健診結果を読む② 血液検査 2017.7.19
- §3 健診結果を読む③ 尿検査 2017.7.21
『健康を考える』
- §1 自分の健康を意識していますか 2017.5.29 ※COPD
- §2 よく聞くけど生活習慣病とは 2017.5.31
- §3 毎日、健康生活を過ごすためのポイント 2017.6.2
『身近な疾患 生活習慣病』
- §1 死因の第1位の「がん」を知る 2017.6.5
- §2 循環器疾患のリスクを知る 2017.6.7
- §3 合併症がこわい糖尿病 2017.6.9
『将来に影響する生活習慣』
- §1 メタボリックシンドローム 2017.6.12
- §2 コレステロールを知る 2107.6.14
- §3 肥満が招く肝臓病、脂肪肝 2107.6.16
『夏の健康生活』
- §1 身体に大切な水の代謝のおはなし 2017.6.19
- §2 夏の運動習慣のための豆知識、熱中症 2107.6.21
- §3 気をつけたい食中毒と食の安全 2017.6.23
『女性特有の疾患』
- §1 乳がんを知る ~超音波検査士の目線から~ 2017.7.10
- §2 女性だけの疾患 婦人科領域(子宮・卵巣) 2017.7.12
- §3 女性ホルモンと更年期障害 2017.7.14
<関連サイト>
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD) Wikipedia
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臨床検査技師/超音波検査士/健康管理士一般指導員/健康管理能力検定1級
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