元気&HealthのJunchanのblogにご訪問ありがとうございます。医療スタッフのメンタルパートナー かたよし純子です♪ 今週は、尿潜血「血尿」を取り上げたいと思います。この春も、多くの方が健診を行ったのではないでしょうか。その中で必ず行われる尿検査があります。けっこう女性が引っかかるのが尿潜血検査なのではないでしょうか。「いつも陽性だから大丈夫」そんなことを思っていませんか?ほんとうに大丈夫なのでしょうか。初回の今日は、偽陽性の多い尿潜血検査、その理由と陽性に出た場合の対応、見た目は赤くないのに陽性と言われたらどうすれば良いのか?そしてどこの診療科に行けばよいのか?ぜひ最後までお読み戴けたらと思います

 

1. 血尿の意味を知る?尿潜血を理解するポイント3つ   

1-1 尿検査の「尿潜血」とは?

1-2 血尿は赤い?「肉眼的血尿」とその原因  

1-3 見た目は正常だから大丈夫?「顕微鏡的血尿」とその原因

今日のプラスα

2.採尿時の注意事項 意外に知らない正しい採尿

3.尿潜血陽性は、どこの診療科に受診しますか?      

生理検査アティテュード®からのメッセージ

・臨床検査技師である意味「偽陰性や偽陽性」とは?

 

1.血尿の意味を知る?尿潜血を理解するポイント3つ

健康診断で必ず行われる「尿検査」ではさまざまな情報が得られます。今週はその中の「尿潜血」反応です。

1-1 尿検査の「尿潜血」とは?

健康診断でまず行われるのが、試験紙に尿浸して行われる「尿一般検査」です。尿一般検査とは、用いられる試験紙により得られる検査項目は異なりますが、「比重」「pH」「蛋白」「糖」「ケトン体」「潜血」「ウロビリノゲン」「ビリルビン」「白血球」「亜硝酸塩」「色調」「混濁」などを検査することができます。

【尿潜血反応とは】

この中の尿「潜血」反応とは、尿の中に血液が混在しているかどうかを調べる検査です。通常は、腎臓でろ過されますので尿の中に血液が混ざることは無いのですが、何らかの原因により尿に血液が排泄されてしまっていることを通常は、意味しています。そして、尿に血液が混ざった状態を「血尿」と言っています。

〔尿潜血検査でわかること〕

陽性反応を示すと尿路系のどこかに出血の原因があることが疑われます。尿路系とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道となります。このどこかの器官に以上が発生していることの身体のサインとなります。ただし、女性の場合は、生理中に検査を行うと血液が混入することもあり、尿路系に異常がみられなくても陽性反応を示すことがあります。

尿検査評価
  • 正常 :陰性(ー)
  • 要注意:(+)または(±)
  • 異常 :(2+)以上

 【どうして陽性になるの?尿潜血の原理、偽陽性を示す理由】

一応私、臨床検査技師なので、原理を比較的簡単なレベルでお伝えしたいと思います。その理由は、「偽陽性」ということがあるということを知って欲しいからです。

通常の尿試験紙法では、赤血球の血色素成分ヘモグロビン中のペルオキシダーゼ様作用を利用しています。潜血試験紙には、溶血剤が含まれ、赤血球を溶血させて反応させています。ペルオキシダーゼ反応による活性酸素は、試薬成分である還元型色原体を酸化して酸化型色原体となる青色になる陽性反応となります。

◯偽陽性を示す場合

偽陽性とは、この場合赤血球の混在を知りたいのに、赤血球以外の原因で陽性反応を示すことをいいます。ヘモグロビンの中のペルオキシダーゼ様作用反応を利用しているために同様の反応を示す、ヘモグロビン以外の物質となる「ミオグロビン」「細菌」「白血球」中の中に含まれるペルオキシダーゼ「精液」中に含まれるジアミンオキシダーゼなどが尿中含まれる場合に偽陽性を示します。

◯尿沈渣検査の必要性と大切さとは?

そのために、試験紙での一般検査での他の検査項目となる「白血球」「亜硝酸塩」などが陽性の場合は、潜血反応が「偽陽性」を示していることを考えなければなりません。また、「ミオグロビン」や「精液」などの混在は、「尿沈渣」を行えば容易に判断されます。ミオグロビン尿では、尿沈渣検査で、赤血球は確認されず、また、精液は、精子が確認されるからです。そのためは、尿沈渣での結果の判断が求められます。

●ペルオキシダーゼのプラス情報

ペルオキシダーゼの存在を示すのがペルオキシダーゼ反応とされます。正常な白血球の中に、貪食・殺菌能をもつ顆粒球、単球は、細胞質の顆粒の中にペルオキシダーゼ反応陽性を示すものを含みます。その白血球の酸化作用によって殺菌能を増強するとされています。

●参考までに…ペルオキシダーゼとペルオキシダーゼ反応とは?

ペルオキシダーゼとは、過酸化酵素.過酸化物を還元して水酸化物にする酵素で、ペルオキシダーゼ様反応とは、ペルオキシダーゼ様作用:偽ペルオキシダーゼ活性により過酸化物を分解し、活性酸素を遊離する反応です。

※情報引用サイト:尿潜血試験紙の反応原理およびその特異性 栄研化学

【尿潜血で分かること】

上記の、尿試験紙の原理で理解できたでしょうか?

潜血反応は、尿中に含まれる遊離ヘモグロビン、ミオグロビン、赤血球と反応して陽性となります。

  • 糸球体性血尿     :糸球体基底膜の破綻(糸球体性腎炎、膜性増殖性腎炎、IgA腎症など)
  • 尿細管・間質性血尿  :主として尿細管基底膜の破綻による、間質性腎炎、腎盂腎炎等
  • 尿路系・泌尿器科的血尿:尿路の腫瘍、結石、炎症、外傷など

ここまでで何となく尿検査の陽性の意味をご理解戴けましたでしょうか。

 

尿の色調成分

<尿の色調成分>

【肉眼的血尿と顕微鏡的血尿とは?】

血尿とは、尿中に赤血球が認められる状態のことをいいます。

具体的にいうと、血液が混在した尿を意味し、100mlの尿に、0.1ml以上の血液が混入すると見た目が赤くなるとされています。血尿が出ると、尿の色調の検査項目では、赤色、血性、またはコーラ色などと表現し、肉眼的血尿とされます。赤い色素ヘモグロビンを有しているために、赤く見えて当然だと思われる方もいるのかと思います。血液そのままのような血尿が排泄されたらすごく驚き、大変な病気だと怖くなるのではないでしょうか。

一方、肉眼的には無色に見える、顕微鏡的血尿といわれるものもあります。また、無症候性血尿と言われるものもあり、尿中に赤血球が認められる状態とされますが、血尿以外の尿異常(タンパク尿や尿円柱など)は認められません。血尿をこの見た目に赤い「肉眼的血尿」と、見た目には正常に見える赤くない「顕微鏡的血尿」とに分けてまとめていきたいと思います。

  • 肉眼的血尿 :尿の色調が赤色、血性、またはコーラ色となった状態
  • 顕微鏡的血尿:尿の色調が正常だが、潜血反応が陽性、顕微鏡検査でも赤血球が確認できる
  • 無症候性  :尿の色調が正常、血尿以外の異常が無い

※関連ブログ:「尿一般検査」健診結果を読む③ 尿検査、「尿路系」 排尿のメカニズム

【尿の色調とは?】

赤色しめす尿が常に赤血球によるものとは限りません。赤色や赤褐色の尿の原因として考えら理由をまとめておきましょう。

  • ヘモグロビン尿(PNH):赤血球の破壊により、赤血球の色素成分ヘモグロビンが存在する
  • ミオグロビン尿:筋肉細胞の分解によりミオグロビン(タンパク質)存在する、
  • ポルフィリン症:血色素の構成物質であるヘムの生成に関与している酵素の欠乏によって生じる疾患
  • 食品や薬剤  :食品として、ビート、ダイオウ、食品着色料、薬剤としてフェナゾピリジンが多い

 

1-2 血尿は赤い?「肉眼的血尿」とその原因 

尿道から真赤な尿が排泄されたら誰でも驚きます。幸いにも私にはその経験がありませんが、立場上、そのような尿には時折出会う経験を有しています。尿路結石などを経験されている方の中には、やや、赤みを帯びたピンク色ということを尿に出会われている方もいることと思います。血尿にも様々な原因があります。

【見た目が赤い、肉眼的血尿とは?】

見た目にも赤色の肉眼的血尿は、小児や25歳以上の若年者を除いた場合のほとんどは、泌尿器疾患とされています。肉眼的血尿が強いほど、多くの疾患がみられるとされています。症候性肉眼的血尿と無症候性肉眼的血尿とに分けられます。

症候性肉眼的血尿は、腰痛やや排尿痛など血尿以外、何らかの症状がある場合を示します。腰痛、発熱などを伴う、尿路結石、炎症性疾患となる腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎などは、血尿以外の症状に対する精査をしていくことで、診断は容易かと思います。次回以降の疾患にところで詳しくまとめていきたいと思います。

【無症候性肉眼的血尿】
成人の肉眼的血尿のほとんどが、泌尿器科疾患とされ、精査を行う必要があるためにしっかりと押さえて欲しいところでもあります。血尿診断ガイドライン 2013の内容を中心に、原因と疾患をまとめていきたいと思います。

◯尿路上皮がん:膀胱がん、腎盂尿管がん

50歳以上の血尿の原因としていちばん多くみられる疾患が、膀胱がんです。膀胱がんの約80%が血尿を主訴としてあげています。血尿が出たり出なかったりという、間欠的血尿の症状をしめすために、過去の血尿の有無も関係します。腎盂尿管がんの初期症状では、60%に肉眼的血尿がみられるとされ、20~30%に側腹部痛を伴うとされています。

◯腎がん

腎がんの3大症状は、側腹部痛、血尿、腹部腫瘤とされていたが、最近では、健診での発見率が上がっているそうですが、肉眼的血尿がみられた場合には、疑う必要性がある疾患の1つとされています。

※関連ブログ:尿路系に発症する疾患 尿路系がん(膀胱がん、腎がん
◯前立腺肥大症

手術適応となる前立腺肥大症の12%に肉眼的血尿を認めるとあります。前立腺肥大症の組織が血尿の原因とされるとのことです。

◯腎動静脈奇形

比較的まれとされる疾患としてあげられる腎動静脈奇形に肉眼的血尿がみられます。

◯腎梗塞

腎梗塞は、腎動脈や分枝の閉塞によって腎組織の急激な壊死を起こす疾患とされます。後から考えると腰が痛かったなどの症状もあるようですが、肉眼的血尿を認めるとされます。腎梗塞は、さまざまな原因から発症するとされ、腎動脈塞栓や腎動脈血栓により引き起こされます。

◯腎糸球体疾患

肉眼的血尿を症状とする糸球体疾患として、IgA腎症、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、半月体形成性腎炎が重要とされています。慢性腎炎症候群とされる、IgA腎症は、反復性の肉眼的血尿を認めるとされています。

◯尿路結石症

ほとんどの尿路結石で、血尿を伴い、側腹部痛も伴います。肉眼的血尿が唯一の症状の場合もあります。

◯出血性膀胱炎

出血性膀胱炎のはさまざまな原因があるとされます。

  • 化学物質による膀胱出血
  • 特異体質、免疫原性の薬剤反応による膀胱出血
  • ウイルス感染による膀胱出血
  • その他、原因不明の膀胱出血
◯特発性腎出血

特発性腎出血とは、通常泌尿器科でおこなわれる検査で原因が不明とれる血尿の総称です。

症候性とされていて、今現在、特発性腎出血の原因として考えられるものには、尿路の微小血管の破綻や、血管腫など血管病変が主な原因で引き起こされていると考えられているとのことです。

ちなみに以前は、自律神経異常、腎低酸素症、腎杯静脈交通による出血、腎炎、腎盂腎炎による出血、アレルギー、病巣感染性腎出血、検査で発見できない小病巣からの出血、線溶系異常による出血などが推測されていたとのことです。

・ナットクラッカー症候群

という現象があります。超音波検査の中ではよく知られた疾患です。左腎静脈の還流障害による左腎静脈内圧の上昇に伴い、左腎出血が起こる現象が認められる。症状のみで、通常、副血行路の構築され、血尿は改善するとされています。疾患としての意味合いがなく、通常治療対象とはならないとされています。

【原因はさまざまですが、精査は必要です】

このように、肉眼的血尿以外に何の症状もない疾患が多くあり、深刻なものから、治療対象とならないものまでさまざまです。しかし、血尿を認めたら、対処方法の第1選択として、必ず、泌尿器科などの診療機関への受診を行ってください。

1-3 見た目は正常だから大丈夫?「顕微鏡的血尿」とその原因

目には見えなくても尿に血液成分が混入している状態が、顕微鏡的血尿です。

【視覚化されない尿潜血反応陽性の時とは?】

尿路系の疾患や結石などさまざまな疾患が、否定できない状態だということをまず、認識して欲しいと思います。女性では生理の前後なら陽性と出ることもありますし、一時的な潜血は誰でも起こりやすいもの。一過性なら問題ありませんので、まずはもう一度検査を受けてみましょう。「でも見た目は、いつもと変わらない、血液が混ざつているとは思えない」という方が大半なのだと推測します。

〔目には見えなくても赤血球が排泄されている〕

通常試験紙法によって検査される尿の潜血反応は、先に原理を説明したように、非常に感度の良い検査です。わずかな血液が混ざっただけでも陽性となるため、健康診断では、かなりの比率で陽性になってしまいます。とくに女性の場合、生理の時や、生理の直後などに検査を行うと、ほんの少しの血液でも混入しかなりの確率で陽性となります。生理時以外にも、尿潜血反応が陽性になる原因には、非常に多くのものがあげられます。

健康診断で陽性となり、2次検査を受けた方は、尿検査以外にも、血液検査、超音波検査、レントゲン検査など多くの検査を行ったのではないかと思います。そして何も原因となる疾患発見できなかったという方が、多いのではないでしょうか。そのため今度もどうせ大丈夫と思い、放置されている人も少なくないのかもしれません。

【原因が特定される割合は低い】

ドキドキと緊張しながらさまざまな2次検査を行っても血尿の原因が特定されるのは、40%に過ぎないとの数字もあります。そして、治療対象となるのはさらにその40%弱とも言われています。時間と検査費用をかけて検査を受けても拍子抜け、それが毎年の健診毎になると、またきっと同じ出し、大丈夫だよね・・・ということになっていませんか。

それでは、なぜ医療費をかけて尿の潜血陽性に際して、2時検査が必要とされるのでしょうか。その理由は、尿路系の悪性腫瘍のリスクがあり、それ以外にも腎疾患や尿路系疾患が発見されることがあるために、2次検査が勧められるのです。

【尿沈渣から分かること】

健診で行われる尿一般検査では、尿試験紙のところで説明したペルオキシダーゼ様反応で潜血の有無を判断しているとお伝えしました。さらに、偽陽性の原因理由おあげています。2次検査では、尿沈渣まで確認します。

〔尿中成分 尿沈渣からわかること〕  

尿沈渣で、腎臓や尿路系の疾患の種類や部位を推測することができます。

尿沈渣(にょうちんさ)とは、約10mlの尿で検査が行えます。尿を遠心分離器にかけたときに沈殿される赤血球や白血球、細胞、結晶成分などの有形成分のことをいいます。この沈渣物を顕微鏡で観察し、尿に含まれる細胞数の増加や有無を調べて、腎臓などの異常診断や病状の経過観察などを行います。この検査は、尿タンパクや尿糖、尿潜血などの定性検査で陽性(+)と出たときには、必ずといっていいほど行なわれます。

〔尿沈渣は、身体からのメッセージ〕

腎臓でつくられる尿は、尿管や膀胱、尿道を通過して排出されます。尿沈渣は、その過程で混入する細胞を調べられることになります。沈渣に含まれる細胞成分を分析することで、腎臓など尿路系の疾患の種類や部位を推測することができます。この検査は腎臓や尿路系の疾患の診断にとても重要な役割を果たしていることになります。

【尿潜血陽性と、沈渣との関係性】

通常は、尿潜血反応陽性の場合、尿沈渣検査でも赤血球が多くみられます。

しかし、上記の偽陽性反応を示す場合があります。その場合は、当然、赤血球以外の物質がペルオキシダーゼ様反応を示しているわけですから、沈渣の中には赤血球が確認されません。ミオグロビン尿がとくによくみられる原因物質となります。ミオグロビンは、激しい運動などの後に、大量に筋肉から放出されることで尿にでてくることがあるとされています。

〔赤血球の形状が示すもの〕

尿沈渣で赤血球が認められる場合、形状にも注意をして検査技師は尿沈渣を確認しています。腎疾患がある場合、赤血球の奇形が生じることがありまが、奇形が無い、正常な赤血球の場合は、腎臓以下の尿路系となる膀胱や尿管などでの原因が疑われます。

【顕微鏡的血尿で行われる臨床検査】

尿細胞診検査

膀胱がんの鑑別診断として行われます。膀胱洗浄液で行われる細胞診は、尿細胞診よりも感度が高いとされます。

尿細菌培養

症状とともに、尿沈渣で膿尿(尿中に多量の白血球を認める)がある場合、尿路感染症が診断され、尿細菌培養が行われます。

血液検査

腎機能として、血清クレアチニンの測定、糸球体腎炎などが疑われる場合、ASO, ASK,CH50,C3,C4,IgG,IgA,抗核抗体などが測定されます、50歳以上の男性では、前立腺がんのスクリーニング検査としてPSAを行うことがすすめられます。

膀胱鏡検査

尿路上皮がんのリスクが高い場合、 かなりの苦痛を伴いますが、膀胱鏡検査が勧められます。

【血尿のおもな原因】

血尿の原因としては、あげられるものは、肉眼的血尿と同様です。尿路系の悪性腫瘍や結石、炎症性疾患、その他、腎臓の内科的な病気など様々な要因があります。その他、顕微鏡的血尿の主な疾患には、腎臓機能障害による糸球体の赤血球の濾過機能のなんからの原因による血尿もあります。この場合には、尿タンパクの混在があるか否かで判断されます。

  • 悪性疾患

膀胱がん、腎がん、前立腺がん、尿管がん、腎盂がん など

膀胱がんは、顕微鏡的血尿で診断される悪性腫瘍の中で最も多いがんとされます

  • 良性疾患

尿路結石はほとんどの場合顕微鏡的血尿をともないます。膀胱炎では、膿尿と血尿を伴う場合があります。

  • 膀胱炎
  • 前立腺炎
  • 尿路結石
  • 腎がん、膀胱がん、前立腺がん
  • 前立腺肥大症
  • 腎臓の細い血管の病気(糸球体疾患と呼ばれる)
  • 腎臓の嚢胞(多発性嚢胞腎)
  • 尿管を狭くする瘢痕(狭窄)、その他の尿管の異常

 

2.採尿時の注意事項 意外に知らない正しい採尿  

血尿診断ガイドライン 2013というものから大切な部分を抜粋しておきましょう。

【採尿時の注意】

●尿検査での採取には「中間尿」を通常用いるようにする

中間尿とは「出始めの最初の尿」という意味で、排尿始めの尿、および排尿最後の尿は、採尿コップに取らない。便器に排泄してください。

●尿検査の前は、激しい運動は避ける

ミオグロビン尿となる場合がある

●尿の種類および採尿方法を明記

自然採尿、カテーテル採尿(全部尿、初尿、中間尿、尿路変更術後尿など)

●採尿前に外尿道口を清拭することが望まれる

女性は、トイレの温水洗浄器:ビデによる清拭が望まれます

●採尿時間を記載する

尿検体を採尿後は、速やかに提出

●提出された尿検体は速やかに検査する

尿沈渣を行 ときは採尿後4時間以内には実施、自宅での採尿の場合は、早めに届ける。検査までに時間を要する場合は冷暗所で保存する。

●女性の尿検査は、月経時、直後に検査を受ける場合、必ずその旨を申告する
●服用薬剤および造影剤の使用の確認

 

【健診時の採尿条件】

可能なら早朝第一尿を採取する

検査の前日夜、ビタミンC(アスコルビン酸)を多く含む食品摂取を控えることが望ましい

尿検査の陽性率に関するいろいろ

  • 尿潜血の陽性率は、女性に多く見られる。
  • 尿潜血の陽性率は、加齢とともに上昇する。
  • 通常、採尿時間には決まりはなく、随時尿、早朝尿、食事の影響はみられないが、入院時は、早朝尿が勧められる。
  • 女性の場合は、月経時の検査を避ける、検査を行う場合は、血液の混入にも注意しその旨を伝える。
  • 激しい運動後、外傷後など尿潜血反応が陽性となる場合がある。(ミオグロビン尿)
  • 血尿の約10%の症例に、タンパク陽性を伴うことがあるとされる。
  • タンパク尿を伴う場合は、その後、腎不全となるリスクが高い、要精査が勧められます。
  • 健診など無症候性の随時尿での潜血陽性は、再検査が勧められ、陽性となった場合は、積極的に精査が勧められるが、陰性の場合は、精査を推奨されない。

 

3.尿潜血陽性は、どこの診療科に受診しますか?

もし、血尿が見られたらどこの診療科を受診しますか?

【健診で尿潜血の陽性を指摘された場合には】

肉眼的血尿が有った時、健康診断で潜血異常を指摘されたりした場合、どこの診療科を受診されていますか?血尿の場合は、泌尿器科への受診をおすすめします。女性は、泌尿器科というとちょっと抵抗感があるのかも知れません。血尿の原因となる疾患は、尿路系疾患です。尿路系の専門は泌尿器科です。内科で血尿を診るのは、腎臓内科となりますが、心臓の内科的疾患に対してとなります。

血尿の精査は、泌尿器科で2次検査を受けることが勧められます。原因検索のためにいくつかの検査が必要となることは、上記でもお伝えしました。

◯ 血尿陽性の場合の検査では、尿沈渣がポイント

通常行われる健康診断などでは、試験紙を用いた検査で、ヘモグロビンのペルオキシダーゼ様反応です。上記で説明したように、偽陽性もそれなりの割合で含まれます。尿沈渣を行い、顕微鏡で確認することで疑陽性を除外することができます。

◯ 尿沈渣検査

尿一般検査で、潜血陽性となった場合、まず行われる検査が尿沈渣です。尿中に含まれる赤血球数が20個/μL以上、尿沈渣は5個/HPF以上(※)と認められる症状が血尿とされています。

※尿沈渣 5個/HPF以上とは、顕微鏡での倍率で400倍としたときに、1視野あたりに5個以上赤血球見られるという意味です

◯ 尿沈渣はすぐれものです

尿中の赤血球以外、白血球、腎上皮細胞、扁平上皮細胞、異型細胞などの有無や、タンパク質陽性の場合に見られることがある、円柱成分、細菌の有無なども確認することができます。

【健診で尿潜血とタンパク質の陽性を指摘された場合には】

尿潜血やタンパク質の陽性も指摘された場合には、内科疾患が疑われます。そのため、泌尿器科受診よりも腎臓内科への受診が勧められます。タンパク尿の場合は、腎臓機能の問題、糸球体疾患の可能性が高いからです。

 

腎:ろ過機能 ネフロンの働き

<腎 ろ過機能 ネフロンの働き>

 

尿潜血のみの異常の場合は、泌尿器科受診、尿潜血とタンパク尿の場合は、腎臓内科の受診と思って戴くと良いかもしれません。また、タンパク尿のみの場合も腎臓内科の受診が勧められます。腎機能が原因の場合に、泌尿器科受診しても紹介状がだされ併診となりますので、二度手間となってしまいます。

  • 泌尿器科:尿路系疾患を疑う、尿潜血陽性の場合
  • 腎臓内科:腎臓機能異常を疑う、尿潜血とタンパク陽性

次の段階にて行われる検査には、腹部超音波検査、尿細胞診、CT検査や造影剤を使った尿路造影検査などがあり、何らかのそれらの検査で何らかの異常が見られた場合、膀胱鏡などの検査が追加されることもあります。

◯ 腎機能障害の疑いで行われる腎機能検査

腎障害となる糸球体疾患が疑われる場合は、腎機能を評価する血液検査が行われます。GFR 、クレアチニンクリランスが行われる場合があります。クレアチニンクリアランスとは、以前のブログでもまとめましたが、24時間蓄尿したものを用いて、タンパク量の測定や、腎機能も計測されます。場合により腎生検も行われることがあります。

◯ 年齢による尿潜血陽性のへの対応方法

50歳以上のすべての人、がんリスクを持つ人は、一般的に出血現の特定のために、膀胱鏡が勧められるとされます。また、男性の場合では、前立腺腫瘍マーカーのPSA検査も行われることがあります。

50歳未満の場合では、上記にあげた画像診断や、血液検査、尿検査などでの異常がない場合は、6~12ヶ月後の尿検査が勧められるとしています。

 

 

生理検査アティテュード®からのメッセージ

・臨床検査技師である意味「偽陰性や偽陽性」とは?

臨床検査の偽陰性や偽陽性を正しく判断するのも臨床検査技師なのだと思っています。

偽陰性と偽陽性とは?

尿潜血検査の偽陽性にも、いろいろあることもお伝えしました。臨床検査技師は、検査結果報告の際に、この偽陽性や偽陰性の判断も求められると思っています。一言で「偽陰性」と「偽陽性」を説明すると、

  • 偽陰性:検査などで、本来は陽性であるのに、誤って陰性と判定されるもの
  • 偽陽性:検査などで、本来は陰性であるのに、誤って陽性と判定されるもの

となります。この話を感度と特異度まで拡げるとかなり長くなりので、今回は差し控えさせていただきます(笑)

そして、今日のテーマは、尿検査なので偽陽性と判断された場合も、念のために再検査を受けることをお勧めいたします。試験紙は、今の時代簡単に購入することができ、自宅でも検査が行なえます。また、尿沈渣までの検査もお勧めいたします。採血などに比較し、比較的簡単に行うことができます。

改めて思う臨床検査技師の役割

今日いちばん私がお伝えしたい『生理検査アティテュードからのメッセージ』はここからです。

現在の臨床検査は、そのほとんどが「自動化」されています。ネットでキットを取り寄せて、「1滴の血液」からさまざまな検査が行える時代になりました。すごく便利な時代になったものです。分析に使われる検体:血液や尿、その他の体液などのことを言いますが、極微量で検査できる項目がすごく増えました。私が学生の頃とは大違いです。学生の頃の実習では、生化学反応の原理を学び、フラスコやビーカー、メスシリンダーを用いて試薬を作りから。血液を遠心して、血清となる上澄みを取り、試験管にピペッティング(血清を入れる)を行い試薬と反応させ、時間を置き、分光光度計で測定する。あっ、その前に標準グラフを作らねば。。。と、すごく大変だった。いつの時代の人と思われそうですが、病院ではすでに自動分析の時代でしたよ(^^;)

そう、スイッチポンで試料や試薬の分注を行い測定してくれます。実に楽です。

だったら

臨床検査技師の国家資格がなくても、誰でも検査できるじゃない!

そう思うのかも知れません。

いやしかし、出された数値を評価できるのが臨床検査技師の国家資格だと私は思っています。偽陰性や偽陽性の可能性を見抜くことも含めてです。

単なる数字から「臨床検査報告書」にするということ

分析装置は、メンテナンスが必要です。分析装置や診断装置が正しく機能するように、観察し、メンテナンスを行うこと、そしてその正しく整備された分析装置や診断装置を正しく使い、出された結果の評価に正確性に判断できる能力を持つものが「臨床検査技師」だと私は理解しています。垂れ流し的に、スイッチポンで分析装置から出された数字は検査結果ではありません。検査数値を「検査報告」にしなければなりません。単なる数字を「臨床検査報告書」にするのが「臨床検査技師」です。

臨床検査報告書にするということの意味、この数字がほんとうに被検者の数値として適正なのかどうかという判断です。他の数値との関係性を判断し、臨床症状に見合うのか?総合的なデータとして読めるか否かが臨床検査技師の技量だと思っています。電解質の異常を示すデータが得られそのまま報告、点滴のすぐ側から採血していたということや、検体の保存方法が間違っていた、食事の影響が考えられるなど、異常値を異常値として良いか否かの判断なども当然必要で、ヒヤリハット値として即時報告が求められます。その判断も臨床検査技師が行うことが義務となります。

紙切れだけの国家資格にならないようなに心して臨床検査を行いたいものです。

最後に超音波を行う若い臨床検査技師へのメッセージ

血尿精査の目的で腹部超音波を依頼された場合、上記の「腎動静脈奇形」も念頭にいれてスクリーニングをして欲しいとです。腎動静脈奇形は、比較的まれとされる疾患ですが、腹部超音波検査時に、腎血流量をみるためにカラードプラーを持ちいることで発見されます。血尿の際の腹部超音波を依頼された場合には、必ずカラードプラーを使用することで発見できます。異常なモザイクパターンとして描出できます、実際に見つけた経験もあります。

ぜひ、一歩先の検査を常に意識して行って戴けたら嬉しいです。

 

今日のまとめ

  • 尿潜血陽性の場合、検査の特性から偽陽性もあるが、放置セずに尿の再検査は行うことが望まし
  • 肉眼的血尿は、その他の症状の有無も確認し、速やかに泌尿器科受診を行う
  • 顕微鏡的血尿は、放置されがちだが尿検査の再検は必須、尿沈渣で赤血球、その他の確認を

 

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『夏本番前に熱中症を知る』 2018.5.28~6.1

『心不全を知る』 2018.5.21~5.25
『気になる健康情報』 2018.5.14~2018.5.18
『骨粗しょう症の話』 2018.5.7~5.11

依存症は特別ではない、アルコール依存症とは? 2018.5.2

『胆のうと胆管』 2018.4.23~2018.4.28
『春の体調を理解する』2018.4.9~4.13

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みなさまのお声をぜひお聞かせください!お待ちしております!

Pure Medical attitude 

生理検査アティテュード®

代表 かたよし純子 Junchan♪  ※自己紹介はこちらから

臨床検査技師/超音波検査士/健康管理士一般指導員/健康管理能力検定1級

THINK YOUR LIFE -ミドルエイジとともに-side by side-
共同代表 Junko Katayoshi

今日も最後までありがとうございました。

☆アンコモンセラピー読書会☆

毎月、大崎ゲートシティ スターバックスコーヒーで開催しています。ミルトン・エリクソンの戦略的手法を紹介されている名書「アンコモンセラピー」この読書会を毎月開催しています。次回は、6月25日(月)となります。HPイベント、Facebookイベント準備できましたらこちらでもUPいたします。