元気&HealthのJunchanのblogにご訪問ありがとうございます。医療スタッフのメンタルパートナー かたよし純子です♪ 今週は甲状腺をまとめています。初回は、甲状腺ホルモンやその機能について、2回目は、甲状腺機能異常でした。今日は甲状腺の最終回ですが、その他の甲状腺疾患をまとめていきます。甲状腺ホルモンを作っている濾胞細胞が破壊される破壊性甲状腺炎、甲状腺腫の良性疾患の殆どを占める腺腫様甲状腺腫、甲状腺腫の悪性となる甲状腺がんなどを中心にまとめていきます。さらに高齢で認知症と思われていた症状が、実際は、甲状腺機能異常だったということもよくあるようです。知識としてぜひチエックしてください。

   

1.さまざまな甲状腺疾患を知るためのポイント3つ

1-1 甲状腺炎症性疾患 破壊性甲状腺炎

1-2 意外に多い甲状腺の良性腫瘍性疾患「甲状腺腫」

1-3 甲状腺にみられる悪性腫瘍

今日のプラスα

2.認知症と思われる高齢者の甲状腺疾患

3.医療の進歩にかかわるさまざまな力

生理検査アティテュード®からのメッセージ

・甲状腺や頸部エコーを受ける時のいろいろ...

 

1.さまざまな甲状腺疾患を知るためのポイント3つ

ここまで2日間で、甲状腺ホルモンとその分泌異常で引き起こされるよく聞く疾患、甲状腺機能亢進症のバセドウ病と、甲状腺機能低下症の橋本病を中心にまとめてきました。甲状腺疾患は、大きく3つに分けられます。甲状腺機能亢進症と言われる①甲状腺中毒症と②甲状腺機能低下症、③腫瘤性疾患です。

1-1 甲状腺炎症性疾患 破壊性甲状腺炎

甲状腺中毒症といわれる中に含まれる亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎があります。この2つを破壊性甲状腺炎とも言います。

◯破壊性甲状腺炎とは?

甲状腺ホルモンは、甲状腺の濾胞細胞で作られています。甲状腺の炎症により、この濾胞細胞は破壊されることによって発症するものを破壊性甲状腺炎と言っています。

●破壊性甲状腺炎の種類
  • 急性化膿性甲状腺炎:先天性奇形の感染症所見からの甲状腺炎で発症はまれ
  • 亜急性甲状腺炎
  • 無痛性甲状腺炎
  • 橋本病の急性憎悪
  • 甲状腺がんによる破壊性甲状腺炎

などに分類されます。急性化膿性甲状腺炎は、基礎疾患として先天性奇形の瘻管への感染症所見からの甲状腺への炎症波及とされ発症はまれです。また、甲状腺原発の悪性腫瘍や、多臓器からの転移により、まれに破壊性甲状腺炎症状をきたし、甲状腺中毒症状をきたことがあるようです。

この中で、まれではない破壊性甲状腺炎のうち、亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎についてまとめておきたいと思います。

 

甲状腺濾胞細胞

<甲状腺濾胞細胞>

 

◯痛みが動く亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎は、おそらくウイルスが原因とされる甲状腺の炎症性疾患です。痛みと発熱をともなう甲状腺の炎症性疾患として見られます。急性よりも症状が持続しますが徐々に約2~3ヶ月で自然消失していきます。一過性に上昇した甲状腺ホルモンも正常化します。通常数ヶ月で沈静化がみられますが、ときに再発しホルモンを生成している濾胞細胞の崩壊が広範囲となる場合に、甲状腺機能低下症の状態となったままの場合もあるようです。

●亜急性甲状腺炎の症状

亜急性甲状腺炎の症状は、炎症が強いときに痛みや発熱といった症状がみられますが、自然に改善するとされます。前頸部の圧痛として発症することが多く、38℃前後の発熱を伴うことがあります。炎症の場所が移動することが特徴で、炎症の場所とともに痛みも移動します。下顎や耳などへの放散痛としてみられることもあるようで、歯痛、咽頭痛、耳の炎症などと混同されることもあるとされます。

《おもな症状》
  • 甲状腺の痛み

    頸部の痛みとして自覚することが多いようで、嚥下時、触診時に感じるくらいから、何もしなくても痛むこともあるものまでさまざまです。

  • 甲状腺の腫大・頸部の腫れ

    甲状腺全体~左右片方のみの腫れとして症状が現れ、腫れと痛みが経時的に位置が変わるのが特徴です。

  • 発熱

    微熱から高熱までさまざまで、発熱を伴わない場合もあります。

《甲状腺ホルモンによる症状》

初期にこの甲状腺に炎症が起きることで、この濾胞細胞が破壊されることになり、甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血中に放出されることになります。他の甲状腺疾患よりも倦怠感や疲労が強いとされ、甲状腺の腫大が左右非対称性に見られることと、腫大部分に圧痛があることが特徴です。

そのため、血中の甲状腺ホルモン量が増加し、甲状腺機能亢進症と同じような動悸や息切れなどの症状が出現することになります。TSH(甲状腺刺激ホルモン)が低下し、遊離T4(FT4)が上昇がみられ一時的に甲状腺ホルモンの上昇となり、それに続いて甲状腺機能低下症がみられる期間が一過性みられ、そののち正常化します。

●亜急性甲状腺炎の診断
《血液検査》

CRPの上昇、赤血球沈降速度亢進、白血球増加、肝機能(AST・ALT)軽度上昇

《甲状腺機能》

甲状腺ホルモン(FT3、FT4)上昇、サイログロブリンの上昇、TSHは正常

《超音波検査》

甲状腺の部分的腫大、検査時の圧痛所見、炎症性による実質の変化により他の甲状腺機能異常との鑑別ができます。経時的変化が超音波検査でも明確に確認できます。

その他、放射性ヨウ素の取り込みが著明に抑制される

 

亜急性甲状腺炎

<亜急性甲状腺炎>

 

◯破壊されても疼痛の無い、無痛性甲状腺炎

無痛性甲状腺炎とは、亜急性甲状腺と同様に一過性の炎症の炎症性疾患ですが、亜急性甲状腺炎のような疼痛が見られないものを言います。

●原因・その他

亜急性甲状腺炎同様に、甲状腺濾胞の一過性破壊が原因とされるために生じる甲状腺中毒症の1つとされています。自己免疫が関与し、基礎疾患として橋本病があるともいわれています。また、産後に多く出現することもあると言われています。いずれにしても明確な原因はあきらかではありません。

  • 明確な原因は不明
  • 橋本病の経過中に起こることが多い
  • バセドウ病の寛解期にも生じることがあるとされる
  • 正常甲状腺にも起きる
  • 出産後数ヶ月に発生しやすいともいいわれている
  • 無痛性甲状腺炎の再発は珍しくはない
●無痛性甲状腺炎の症状

亜急性甲状腺炎同様に、濾胞細胞の破壊に伴い甲状腺ホルモンが血中に増加するために、動悸、息切れ、多汗、などの甲状腺機能亢進症と同じような症状がみられます。しかし、亜急性甲状腺炎の際に生じる、頸部、甲状腺の圧痛が認められないのが特徴となります。甲状腺濾胞細胞が徐々に破壊されるために痛みがないとされます。

例外として、病理診断上、亜急性甲状腺炎の所見となるにも関わらず疼痛所見のないものや、無痛性甲状腺炎にも疼痛がある場合もあるとのことで鑑別困難なことがあるようです。

甲状腺ホルモンは血中に放出されて遊離するため血中の甲状腺ホルモン濃度が高値になります。多くの場合、血中甲状腺ホルモンは3か月で以内に正常化します。一時的に甲状腺ホルモンは低下することがあります。この病気はバセドウ病が良くなっている方にもみられることがあります。また、出産後にもおこりやすく、何度か繰り返すことも少なくありません。

●無痛性甲状腺炎の診断
《血液検査》

炎症所見は無く、CRP、赤血球沈降速度はいずれも正常値

《甲状腺機能》

亜急性甲状腺炎と同様、FT3、FT4はいずれも高値、TSHは正常

《超音波検査》

甲状腺は、正常から軽度のびまん性腫大のみ。無痛性甲状腺炎では血流低下を認めることが多い

・その他、放射性ヨウ素の取り込みが著名に抑制される

・慢性甲状腺炎と同様、抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)、抗サイログロブリン抗体(TgAb)が強陽性を示します。

※関連ブログ「甲状腺機能亢進症と低下症

 

1-2 意外に多い甲状腺の良性腫瘍性疾患「甲状腺腫」

甲状腺内部に良性腫瘍を形成する疾患の多くが、腺腫様結節となり、この腺腫様結節には、腺腫様甲状腺腫と濾胞腺腫とがあります。その他に甲状腺嚢胞があります。

◯甲状腺の良性腫瘍「甲状腺腫」

甲状腺腫とは、甲状腺が腫れて大きくなっている状態を一般的に「甲状腺腫」と言います。この中で、甲状腺内に複数の結節を形成する場合を腺腫様甲状腺腫と言っています。甲状腺細胞の増殖する状態、過形成(結節性過形成)の状態です。これに対して、濾胞腺腫は、腫瘍を形成している状態となります。

●腺腫様結節
  • 腺腫様甲状腺腫
  • 濾胞腺腫
●甲状腺嚢胞

 

以下に「腺腫様甲状腺腫」「濾胞腺腫」「甲状腺嚢胞」これら3種についてまとめておきたいと思います。

◯腺腫様甲状腺腫とは:Adenomatous goiter

腺腫様甲状腺腫は、甲状腺の細胞の過形成となり、大きくなるとしこり状に触れることがあります。腺腫様甲状腺腫は、濾胞腺腫より多くみられる疾患ですが両者の鑑別が困難な場合が多いとされます。発症は女性に多く、全年齢層にみられます。

●腺腫様甲状腺腫の症状と対応

小さなものは、ほとんど症状がありません。頸部超音波検査などで偶然に発見されることが多く、超音波診断装置の向上により、非常に小さな数mmのものはよく見られます。

結節が巨大化することで、触知されることや気道の圧迫するような違和感としてみられることがあります。巨大化した場合に対して、内容液の穿刺・吸引する場合もあります。

通常良性の腫瘍とされますが、ときに甲状腺癌が発症していこともあることもあります。適切な診断を受けることや、超音波検査などで経過を見ることが求められます。

●腺腫様甲状腺腫での超音波検査

腺腫様甲状腺腫は、さまざまな様相を示します。ここだけの話として戴きたいのですが、過形成であるために、結節部分の境界が不明瞭であることが多く、初心者での超音波検査ではまれに「無くなった」とされることもあるようです。実際見分けられなかっただけであり、無くなることはありません。適切な機器調整やカラードプラーを用いることで描出可能となります。無くなったと言われたときは、大きな変化は無しとして受けとめてください。

◯濾胞腺腫とは:Follicular adenoma

濾胞腺腫は、通常単発で見られます。超音波画像では、結節が皮膜で覆われることが特徴とされています。

●濾胞腺腫の症状・その他

結節以外のその他の甲状腺実質は、正常のことが多く、小さなものから大きな結節状となることがあり、頸部を圧迫することもあります。ごくまれに、結節での甲状腺ホルモンが過剰生産されることがあり、甲状腺機能亢進症のような症状がみられることがあり、プランマー病と呼ばれるものもあります。

甲状腺癌との鑑別のため、エコー下穿刺細胞診が行われることがありますが、鑑別が難しい場合があり最終診断として組織診となることもあります。

《穿刺細胞診と組織診との違いは?》

穿刺細胞診は、針を穿刺して、注射器で中の細胞を吸引採取して染色し、顕微鏡で確認します。それに対して、組織診とは、組織をの一部を取り出して検査を行うことになります。

 

◯甲状腺嚢胞(のう胞)Thyroid cyst

甲状腺エコーを行っていると多くの人に嚢胞性病変をみることがあります。「水袋」として説明され、よく聞くのではないでしょうか。cyst シストともよく言われます。

●甲状腺嚢胞の症状やその他

症状は多くなり触知される場合を除き、ほとんどなく超音波検査での偶然の発見となります。

甲状腺嚢胞として、超音波検査でみられる場合の多くは、腺腫様甲状腺腫や濾胞腺腫などでみられる続発性嚢胞がほとんどとされます。両者を鑑別することは困難で、超音波検査で描出された場合には、その他の部位に有意所見やリンパ節の腫大などの問題が無いか否かを確認していきますが、単に甲状腺嚢胞として報告されます。

 

1-3 甲状腺にみられる悪性腫瘍

甲状腺の発症したしこりのうち、悪性となる甲状腺がんの頻度は低く、そのほとんどが上記でまとめた腺腫様甲状腺腫です。甲状腺がんは、頻度的に低く、比較的進行が遅く、治りやすいがんが多いとされます。女性に多く、近年は増加傾向ともされています。

◯甲状腺がんとは?

甲状腺がんは、甲状腺細胞から発症する原発性甲状腺がんと他臓器で発症悪性腫瘍が甲状腺に転移してきた転移性甲状腺がんとに大別されます。

●甲状腺がんの分類
《原発性甲状腺がん》
  • 乳頭がん  :濾胞細胞からの発症
  • 濾胞がん  :濾胞細胞からの発症
  • 髄様がん  :傍濾胞細胞(C細胞)からの発症
  • 未分化がん
  • 悪性リンパ腫
《転移性甲状腺がん》

多臓器からの甲状腺への転移は非常にまれだとされていますが、原発巣としては、腎蔵、乳腺、肺、消化管、リンパ節などの組織からの転移があるとされています。おもに腎蔵、乳腺、肺からの転移があるとされています。

原発性甲状腺がんの5種をまとめておきましょう

 

甲状腺濾胞細胞

 

◯乳頭がん

乳頭がんは、甲状腺がんの中でもっとも多く、90%以上と言われています。

乳頭がんという名前は、乳頭状に組織が発育する状態から名づけられ、乳腺とは関係ありません。乳頭がんは、進行が遅く、比較的予後の良い治りやすいがんとされています。女性に多く、10歳代~80歳代まで比較的幅広い年代にみられます。高齢者の場合、乳頭がんは、未分化がんとなる場合が多いために注意が必要とされます。

●乳頭がんの症状

頸部リンパ節への転移を多く認め、甲状腺腫瘍の原発巣が周囲の気管や、反回神経、食道などへも浸潤しやすいとされます。ごくまれに血行性に肺や骨に遠隔転移を見ることもあるとされます。リンパ節への転移は予後にあまり関係せず、転移がみられても転移場所での進行が遅く全般的に治癒しやすいがんとしてあげられます。

最近は、自覚症状はほとんどない状態、頸部超音波での偶然の発見が多いとされています。頸部のしこりとして見られることのみがほとんどで、進行した状態での発見が珍しくなり、自覚的症状を訴えての発症が、ほとんどなくなったようです。

●乳頭がんの検査・その他

甲状腺機能は、ほとんどの場合正常です。甲状腺自己抗体が陽性となるものがあり、サイログロブリンが高値となります。診断には、超音波検査と穿刺吸引細胞診が行われます。

超音波画像上、橋本病と類似している症例があります。画像のみで、橋本病とされているような場合は、必ず経過観察を行うことをお勧めいたします。

 

◯濾胞がん(ろほうがん)

濾胞がんは、上記の濾胞腺腫でお伝えしたように、超音波検査では鑑別困難とされます。甲状腺がんの約5%を占めるとされ、乳頭がんに比較すると頻度の低いがんです。やや若年の女性に多く発症するとされています。

●濾胞がんの症状

乳頭がん同様、自覚症状が無く、表面平滑な単発結節として触知されることがあります。乳頭がんに比べると血行性に肺や骨への転移を認めることがあり、その場合は予後が不良となります。ただ、進行が遅いために早めに対応することが必要となります。

●濾胞がんの検査・その他

前項でまとめた濾胞腺腫同様の臨床症状でとなり、腺腫が甲状腺ホルモンの過剰産生を行い、甲状腺機能亢進症をきたすことがあります。その他、サイログロブリンが高値となります。

穿刺吸引細胞診での確定診断が出来ないこともあり、組織診断が最終診断とされます。

◯髄様がん(ずいようがん)

甲状腺がん全体で1~2%程度に認められるまれながんです。

乳頭がん、濾胞がんは甲状腺ホルモンを生成している、濾胞細胞から発症しますが、この髄様がんは、傍濾胞細胞(C細胞)から発生します。傍濾胞細胞(C細胞)は、カルシウムを下げるカルシトニンというホルモンを分泌する細胞です。

●家族性と散発性

髄様がんは、腫瘍組織内に遺伝性と

常染色体優性遺伝とされる家族性と、遺伝に関与なく突発的に発症する散発性とがあり、発症は比率は半々とされます。家族性の場合は、同時に副腎の腫瘍とされる褐色細胞腫や副甲状腺の過形成をみることが多く、これらの発症も確認することが必要となります。家族性の場合、血液検査の遺伝子診断が可能となっています。

●髄様がんの検査・その他

髄様がんでは腫瘍組織内に、血中の腫瘍マーカーCEAとカルシトニンの測定値が上昇し、甲状腺がんでは腫瘍マーカーの上昇が有効とされるがんです。
乳頭がんと異なり、リンパ節への転移が早期から見られるとされ、予後に影響するとされるためもあり確認は必要です。血行性での肝臓への遠隔転移、縦隔リンパ節などの転移が見られることがあり、予後不良のリスクになります。

髄様がんは、甲状腺内でC細胞の密度の高い甲状腺上極(頭よりの部分)1/3の部分での発生が多く、家族性の場合は、多発することも多いとされています。超音波での他の甲状腺がんとの特徴的な所見はありませんが、嚢胞を見ることはほとんどなく、充実性といわれる所見が特徴で、カラードプラーで明瞭な血流を見ることが多くあります。

※関連ブログ 腫瘍マーカー「健診結果を読む② 血液検査

 

◯未分化がん

甲状腺がんの中では、1~2%のわずかな発症数ですが、甲状腺がんの中では最も予後が悪いとされます。分化がん(乳頭がんや濾胞がん)からの未分化がんへの転化として考えられています。やや女性に多いのみでほぼ同じくらいの割合で、50歳以上、とくに60歳以上の高齢層に多く発生します。未分化がんは、未熟な細胞のために、急速に発育し、悪性度の高いがんとされています。

●未分化がんの症状・その他

未分化がんの症状としては、急激に増大した甲状腺腫、咽頭痛、頚部痛、頭痛、嗄声(させい:かすれ声)発熱、嚥下障害などが見られ、リンパ節腫脹も著明となることが多くみられます。

大きな甲状腺腫を形成する場合があり、腺腫様甲状腺腫や橋本病などと間違われている場合あると言われていますが、触知にて可動性が無く、リンパ節腫大を多くに認めることから鑑別は可能とされています。分化がん(乳頭がん、濾胞がん)が進行した状態で未分化転化するとされるために、分化がんの肺や骨転移、気管や食道、大血管などへの浸潤、頸部や縦隔リンパ節への転移が見られる場合も少なくないとされます。

●未分化がんの検査・その他

37℃台の発熱、軽度の白血球増加、CRP上昇、赤血球沈降速度の亢進などの検査所見があげられます。甲状腺機能は正常範囲ですが、急激な腫瘍な増大のために、破壊性甲状腺炎の状態をとなり、一過性に甲状腺機能亢進症状をみることがあるとされます。一過性にサイログロブリンが上昇することもあるようです。

・頸部・甲状腺エコーの必要性

超音波診断では、腫瘍が大きく、内部での出血や壊死を伴い不均一で、低エコーという比較的典型的な画像が見られます。細胞内の壊死は、未分化がんの特徴的な超音波所見のひとつとなり、その他に粗大石灰化像もみることが多い所見です。また、頸部・甲状腺エコーでは、甲状腺腫瘍の周囲への浸潤や転移所見をみることも多く、頸動脈など大血管への浸潤所見を見極めることもなども超音波検査が重要視されるところです。

◯悪性リンパ腫

甲状腺悪性リンパ腫は、甲状腺悪性腫瘍の1~5%くらいと発生頻度は低く、慢性甲状腺炎とされる橋本病がある場合に発症することがほとんどですが、その橋本病の中でもこくわずかな割合とされています。女性の高齢者に多く、橋本病は、慢性的に炎症が起こっている状態ですが、この甲状腺内へのリンパ球浸潤といわれています。浸潤したリンパ球の腫瘍化により発症することがあるとされています。

●悪性リンパ腫の検査・その他

甲状腺機能は正常で、ときに低下を示すこともあります。橋本病の経過観察中に急激が腫瘍の増大を認めることや、超音波検査で発見さることがほとんどとされます。片側のみに腫瘍が限局するもの、両葉にみられるのも多数発生するものなどさまざまです。腫瘍の描出は低エコーで、嚢胞状にみえることもありますが、カラードプラーを用いることで比較的容易に鑑別されます。

甲状腺発症する疾患をまとめてきました。ご紹介した以外にもまだまれな発症のものもありますが、思っている以上に身近な疾患と言えるのではないでしょうか。

 

2.認知症と思われる高齢者の甲状腺疾患

甲状腺機能異常と認知症が間違われるということを前回のブログでもお伝えしましたが、ここで高齢者の甲状腺疾患をまとめておきたいと思います。

甲状腺ホルモンは、高齢になっても非常にさまざまな症状を招くことになります。高齢者特有の症状となることもあるために知っておくととっさの時の参考になることがきっとあります。

◯加齢に対する甲状腺の変化とは

加齢そのものは、甲状腺と甲状腺ホルモンに対しては、非常に軽微な影響のみとされています。甲状腺ホルモンのT3の分泌がわずかに低下するとされていますが、その影響はほとんどないとされています。しかし、加齢による甲状腺疾患の発症は増えていると言われています。

●高齢者の甲状腺疾患

甲状腺機能に影響がある疾患として、見られる症状の多くの特徴は全身に及びます。通常の高齢者によく見られる疾患の症状としてもよく似たものとされるために間違われることも多くあるとされ、甲状腺機能異常が生じると、高齢者の多くは、かなりの体調不良として日常生活に支障をきたす状態となります。

◯高齢者での甲状腺疾患の特徴

高齢者の場合は、甲状腺機能亢進症でも低下症でいずれに場合も若い人では見られないような症状が現れることがあるとされます。甲状腺機能障害の特徴とされる症状に乏しく、見逃される場合が多いとされています。60歳以上に対して、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症のスクリーニングとして、甲状腺刺激ホルモンTSHの測定をすることが勧められています。

◯甲状腺ホルモン正常、下垂体刺激ホルモン:TSHの上昇

甲状腺ホルモンが正常低値で、TSHが高値の場合は、下垂体機能は正常です。このような場合、うつ病や認知症と診断されることがあるようです。

  • 顔や足のむくみ
  • 悪寒、寒気
  • 皮膚の乾燥、脱毛など

このような機能低下の症状がみられることがある場合、また、物忘れや錯乱、被害妄想などの認知症と似たような精神症状をみることもあり、徐脈も多くにみられる症状となるためにチェックポイントとなります。

眼瞼浮腫もチェックポイントとなります。認知症のような症状があり、甲状腺機能低下症の特徴となる眼瞼浮腫が見られる場合が甲状腺疾患を疑うことも必要です。

●高齢者の甲状腺機能亢進症

高齢者の甲状腺機能亢進症では、特徴的な症状が現れず、虚弱、錯乱、引きこもり、抑うつといった症状、体重減少と疲労がみられるようになると言われます。甲状腺ホルモンの上昇も軽度認めるのみとされますが、軽症の甲状腺機能亢進症でありながら、心機能への影響が大きく、心房細動のリスクが上がり、心血管疾患も増えるといわれています。骨密度の低下も指摘され、骨折のリスクもあがります。多汗、神経過敏や不安、手のふるえ、便秘も比較的よくみられます。排便回数の増加や下痢などもみられます。

バセドウ病は高齢者での発症もあります。甲状腺機能亢進症による眼瞼突出はあまり見られませんが、眼瞼突出が生じると、何かを凝視しているように見えるようです。

●高齢者の甲状腺機能低下症

軽度の機能低下症でも代謝が下がり、血中コレステロールの上昇するために動脈硬化が進行するとされています。心臓や血管疾患のリスク上昇し、認知機能が障害されることもあります。慢性甲状腺炎の橋本病は、高齢者で増加が見られます。

 

高齢者の甲状腺機能異常

<高齢者の甲状腺機能異常>

 

3.医療の進歩にかかわるさまざまな力

甲状腺の関係することを3日に分けてお伝えしてきました。頸部・甲状腺も超音波検査を行う側から振り返ると大きな進歩としての軌跡を私自身が経験してきました。

◯検査技師として感じる、診断技術を支える力

体表プローペの開発も非常に大きく影響していることを実感しています。超音波診断装置がデジタル化され、その当時の体表プローペを見た時にその画像の鮮明さに驚愕しました。確かに今のものとは比較にはならない画質でしたが、その過程があったからの「今」があります。最近のプローペは更に進化し、さらに高周波で多段フォーカスのもの、プローペ1本で腹部から体表まで観察可能と言うものが開発されています。日本の技術力にも素晴らしいものがあります。

このような医療を支える底力があるから今の医療の進歩があるだと私は感じています。振り返るとその技術進歩の最先端とともに検査に携わることが出来たことを感じ、検査技師として感謝の念に耐えません。私は比較的恵まれた環境で超音波検査を行う機会に恵まれていたと感じています。耳鼻科医師のエコー下穿刺吸引細胞診にも数多く立ち合う機会もありました。

その時に得た知識の裏付けをするように、今回病理学的な方向から、甲状腺という臓器をまとめることで、自分の知識に厚みを加えることができたことを実感しています。実際の検査を担当している技師がここまでしっかりと把握していることを切に願います。卒後間もない技師は、甲状腺の血液検査項目と実際のホルモン作用などを、以外にバラバラの知識として覚えていることが少なくないのではないでしょうか。最近の臨床検査の授業内容を把握していませんので、総合的な臨床検査、疾患と直結した検査として学んでほしいと思います。

◯その「何となく症状」の原因は、甲状腺?かも...

厚生労働省報告で、甲状腺機能障害が増えているという報告もあるとされます。今の体調不良が隠された甲状腺機能障害の症状かもしれないということが少なくないようです。具合悪い、体調が何となく思わしくない、そのような場合は、甲状腺を調べてみることもよい方法だと思います。頸部の腫れ、目や顔の表情などにも変化が現れることがあります。

頸部にあるちいさな臓器ですが、大きな働きです。いわば全身もエネルギーをつくりだす元気の元です。頸もとから優しく全身を見守り管理してくれている甲状腺に感謝したいものです。

ストレス過多も甲状腺ホルモンに影響します。甲状腺ホルモンは視床下部や下垂体機能も影響します。ストレスも当然関係しています。呼吸を意識的に整えるだけでもストレス解消には効果がえられます。ヨガやストレッチも効果が期待できます。自分に合ったストレス解消法を見つけることが必要だと私は思っています。

関連ブログ「自分らしい呼吸リズムをつくる

最後何となくまとまりのない内容になりましたが、今週はこのあたりで♡

 

 

生理検査アティテュード®からのメッセージは、比較的若い検査技師向けに私からのメッセージとして書いていますが、臨床検査を受けて戴く側の立場でもぜひ知っていて欲しいことして、社会に向けてのメッセージです。私の医療者としての経験からみなさまへの「医療の在り方」としてのメッセージです。

生理検査アティテュード®からのメッセージ

甲状腺や頸部エコーを受ける時のいろいろ...

 

頸部の超音波検査を受けられたことがある方も多いことと思います。顎を上げて頸部が広く見えるようにして戴くことが基本です。

◯自分のベストの位置を知ること

私は、検査を始める前のポジショニングが非常に大切だと常に思っています。言い換えると「形から入ることも非常に大切」だということです。よい検査は、位置取りから始まる、自分のベストポジションを見つけ、そこから常にスタートすることも上達への近道だと考えています。人によって被検者にどの位置に休んで戴くかが良い検査を行う上でこれすごく大事です。

  1. 検査ベッドと椅子の関係おもに高さなど
  2. 操作しやすい位置に検査の中心ポジションがくるようにセッティング、その位置を見つける。
  • 自分が座った時の自分-被検者との距離、足-頭方向の位置
  • 腕が伸び切った状態になってしまうような位置では十分にスキャンできません

さらに、モニターの高さや、傾斜など、自分のホームを決めて置くことをお勧めいたします。検査担当者に身長や座高、腕の長さなど個人差があります。前任者が行った位置では自分に合わないことがよくあります。

被検者の動作状況(移動が大変などの様子)を確認しながら、お休み戴くポジションに上手く誘導するように言葉をかけることから検査が始まっています。

自分が無理なく、スキャンできる、やりやすい状態で最高でパフォーマンスを行うことが出来ます。極端に身体を曲げた状態や腕や手首を動かくことが出来ない状態ではすぐに疲れてしまいます。疲れないポジション取りをすることが被検者も楽に受けてもらえることにつながります。

◯受ける側からは..

頸部にエコーゼリーを塗布してみるために、襟元が広く開く服装で受けて戴くことが助かります。鎖骨のあたりから、顎から耳の下あたりまで通常、確認します。甲状腺とその周辺組織、リンパ節を見るためです。

●皮下にあるため描出しやすい頸部エコー?!

頸部・甲状腺エコーでは、通常、高周波が7.5~10MHz以上のものが持ちられ、10mmあると非常に大きな病変として描出されます。甲状腺の超音波検査で用いられる周波数は、甲状腺のある場所が、腹部や心臓とは異なり体表から、ごく浅い場所にあるために、高周波が用いられます。腹部や心臓などの臓器と比べ、消化管ガスの影響など超音波診断を阻害する要因が比較的少ない検査として行うことができます。

そのためプローベを、皮膚にあてれば比較的描出可能で、甲状腺、頸動脈などはそれなりには見えます。ほとんど力を必要とすること無くです。

でも押されて

息が...苦しいのですが...

頸部検査をされた時にこんな思いを経験をされた方もいるのではありませんか。初心者の練習のために被検者となることがあります。結構痛いことや、息苦しい思いをすることがあります。頸部に用いるプローペは、高周波のためにほんの少しずれると目標物が画面が見えなくなります。非常に細かな作業になります。

初心者は、目標物が動かないようにと必要以上に力を込めて押し当てていることがよくあります。

●静脈がつぶれない程度のソフトタッチで無かったら

甲状腺を見る時に、頸動脈と並行して頸静脈が走行しています。静脈は、弾性力にとみ、柔らかいためにプローペで押すとぺたんこにつぶれます。この血管がつぶれることが、静脈が閉塞していない確認になるために足の静脈の検査では意図的に行うこともあります。

しかし頸部でこの圧迫を行うとかなり苦しく、場合によっては失神することがありますので注意が必要なのです。

「苦しい」「痛い」とひと言、お願いします!

初心者の技師には、頸静脈がつぶれない程度の力加減で検査を必ず指導しています。でも、画面に夢中になると知らず知らずのうちに力が込められてしまうこともあるのです。苦しいときは遠慮しないで、伝えてください。気を失ってからではおそすぎますよ(^^)甲状腺エコーでの計測

●臨機応変、適材適所で行う検査

比較的頸部は描出しやすい場合が多いですが、痩せ過ぎている場合、逆に頸が太く、皮下脂肪が厚い場合は、当然描出困難となります。甲状腺腫瘍が非常に大きくなった場合は、腫瘍全体がプローブに入り切らないために、計測サイズに誤差を生じることとなり、周囲組織との関連性、浸潤の有無などの確認も不十分となる場合があります。その場合、個人的には腹部などで用いられるプローベを使用することも選択肢として有効だと思っています。

この場合は、体表用プローペと比較し、重さもあり大きいので圧迫感として感じることがあると思います。プローペが途中で変わっても驚かないで、よく見てくれているのだと理解してください。けっして悪い結果だからではありません。より効果的な方法選択として行っているだけです。

このような腫瘍が大きい場合などをふくめて、他の画像診断(CT・MRIなど)を行うことももちろん必要となります。

検査を受けられていて不思議に思ったら聞いてみてください。ちゃんと答えられるかどうかも担当技師の技量を知るためには良いかも知れません。私はそう思っています(笑)

Pure Medical attitude

呼吸を整える §3 自分らしい呼吸リズムをつくる [ 編集 ] 投稿日 : 2017年9月29生理検査アティテュード®

 

今日のまとめ

  • 濾胞細胞の破壊・破壊性甲状腺炎のほとんどが痛みが移動することが特徴の亜急性甲状腺炎
  • 良性の甲状腺腫のほとんどは腺腫様甲状腺腫
  • 甲状腺がんの約90%は、発育がゆっくりの予後が良い乳頭がん

 

 

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