元気&HealthのJunchanのblogにご訪問ありがとうございます。医療スタッフのメンタルパートナー かたよし純子です♪ 検査技師目線で簡単理解ができる健康情報を多くの人に届けたい。そんな目的で週3回発信しています。先週から今週末まで5回にわたり、未病と漢方をお伝えしています。今日はその3回目、老化のメカニズムとその対応を漢方でお勧めできるものをまとめたいと思います。先日受講してきた、「人はなぜ老化するのか?」から、腎とエイジングの関係性、東洋医学で考えるアンチエイジングをまとめていきたいと思います。今日のプラスαは、高齢者に多い疾患に対する漢方薬です。

 

1. 漢方でアンチエイジングにトライ!そのポイント3つ 

1-1 エイジング(老化)は遺伝子のプログラミング

1-2 五臓の異常と症状との関係性    

1-3 老化は、腎が衰える「腎虚」 

今日のプラスα

2.生薬の格付けと高齢者の疾患の特徴と漢方の実際

3.長寿とは?東洋医学で考えるアンチエイジング

 

1. 漢方でアンチエイジングにトライ!そのポイント3つ

 『老化とは、死にやすくなること』 (byゴンベルツ)

年をとった個体が老化し、死ぬことには意味があると考えられています。死は宿命であり、誰でも必ず死にます。人はなぜ死ぬようにできているのだろうか。

 

1-1 エイジング(老化)は、遺伝子のプログラミング

「アンチエイジング」誰しもちょっとは気になるのではないでしょうか。漢方でのアンチエイジングの前に、まずは、エイジング:老化とは、老化のメカニズムから入りたいと思います。

 

【高等動物にある寿命】

先日の大学の講座では、こんなちょっと悩ましいテーマもありました。寿命があるのは高等な生物、すなわち、真核生物だけとされています。下等な生物、原核生物には寿命がないのです。種固有の寿命は、遺伝上にプログラミングされていて、生物は、有性生殖を獲得し、雄と雌によって子どもをつくるとされています。

  • 原核生物:寿命がない、バクテリアなど、細胞器官が無く、環状のDNA構造を持つ
  • 真核生物:寿命がある、細胞器官が有り、染色体遺伝子にかかれ、鎖状のDNA構造を持つ

 

【コラーゲンは変化しています】

コラーゲンがアンチエイジングに良いということは、みなさん周知の事実でしょうか。加齢とともに体内のコラーゲンの重量が変化します。さまざまな臓器で老化は、コラーゲンそのものが、加齢変化するといわれています。骨や皮膚はコラーゲンが減少するとされています。骨や皮膚は、前回のテーマでお伝えした、自然治癒力にも大きく関係しています。

コラーゲンは、加齢により「量」「架橋結合」「酸膨潤性」が変化するとされています。

架橋結合:コラーゲンは線維芽細胞で生成後、分子間の架橋結合で線維形成されます。さらに、加齢とともに線維間の架橋結合が多くなり組織は、線維化が進行します。

酸膨潤性:酸に対する膨潤性(水分の吸収力)が低下するとされています。コラーゲンは、酸に浸すと、ふやけて体積が増します。赤ちゃんの腱のコラーゲンは8倍ぐらいにふやけますが、75歳になると3倍くらいにしかふやけません。膨潤の低下は25歳ぐらいから始まります。25歳はお肌の曲がり角といわれる所以でしょうか。。。

難しそうですが、つまり、コラーゲンそのものが老化するということ、そしてさらに組織での量が減少するために組織が老化するということです。皮膚や骨では、コラーゲン量は高齢になると減少します。

〔皮膚のコラーゲンの変化〕

皮膚の真皮の部分は、コラーゲンが網目構造(架橋構造)を作っていて、皮膚の弾力性や伸縮性のもと、つまりハリのもとです。加齢によりコラーゲン量の減少のため、繊維構造が粗雑になり、コラーゲンそのものがやせ、このような変化が皮膚の弾力性を下げ、たるみやしわの原因になると考えられます。

〔骨のコラーゲンの変化〕

骨の構造は、コラーゲン繊維の周りに、ハイドロキシアパタイトというカルシウムを含む化合物が沈着

加齢により、骨量やコラーゲンとハイドロキシアパタイトの両方が減少して、骨がスカスカになり、強度が奪われ、骨折や骨粗しょう症の原因となります。

このように高齢になると皮膚や骨では、コラーゲン量が減少します。これは、コラーゲン合成と分解のバランスが失われた結果です。

 

【コラーゲン量が増加して老化する】

肝臓、腎臓、心臓は、加齢によりコラーゲン量が増加します。皮膚や骨には、もともとコラーゲンがたくさんする臓器のため、加齢によりコラーゲン量は減少します。

肝臓、腎臓、心臓のコラーゲンは、相対的量が増加するといわれています。これら臓器の機能の中心は細胞にあります。臓器は、多数の細胞で構成されていますが、その細胞の間を埋めるコラーゲン量(架橋)は多くはありませんが、加齢によりさまざまな原因で細胞が減少し、減った分を埋め合わせるようにコラーゲンが増殖します。細胞間の線維化が加齢より起きています。

細胞の死滅により、臓器は機能低下します。コラーゲンの増殖により臓器は硬くなり、肺や心臓の動きは妨げられます。肝細胞の線維化が肝硬変ですが、肝細胞の壊死によりコラーゲンに置きかわり、臓器は硬くなり、肝硬変へと移行した状態となります。

 

【血管の老化】

血管もコラーゲン量が増えます。内皮細胞といわれる血管壁の内膜が肥厚します。よくTVなどでもみたことがあるのではないでしょうか。頸動脈エコー検査で測定される「IMT値」です。IMTとは、内膜中膜複合体の厚さ「Intima Media Thickness」の略、内膜と中膜との厚さです。つまりは、コラーゲンの増殖によりこの部分の壁肥厚が進行していくことで、血管の弾性力が低下していきます。ちなみに血管の弾性力を調べる検査が、ABI/PWV/CAVIという検査です。

 

【細胞の増殖には限界があります!】

人の身体は、約60兆個とも37兆個ともいわれる数の細胞で出来ていて、新陳代謝を繰り返しているとされていますが、細胞の増殖には限界があることが分かっています。細胞分裂は、DNAの端のテロメアという繰り返し構造で行なわれていますが、複製機構上、このテロメアは分裂のために短くなっていて限界があるのだそうです。

 

【酸素があると早く死ぬ】

おなじみの身体を錆びさせる、酸化させる活性酸素です。活性酸素には、

① スーパーオキシドアニオン

② 過酸化水素

③ 一重項酸素

④ ヒドロキシラジカル

この4種類は非常に酸化力が強いとされ、体内の機能分子を酸化させるそうです。体内の分子が錆びる(酸化)することで機能低下が引き起こされるとされています。

〔活性酸素から身を守る〕

この活性酸素の害から身体を守るために、自然治癒力も頑張っています。

・SOD(スーパーオキシドデスムターゼ):スーパーオキシドアニオンを分解

・カタラーゼ             :過酸化水素を分解

その他、これまでもお伝えしてきましたが、植物に含まれる抗酸化物質も活性酸素の害を防ぐためには有効とされています。ビタミンC、E,カテキン、リコピン、ポリフェノールなどが抗酸化物質と言われています。

 

【エイジングのメカニズムのまとめ】

さまざま書きましたが、

① フリーラジカルによる細胞障害

活性酸素など酸化ストレスによる細胞障害により、機能低下

② DNAの遺伝子構造テロメアによる細胞分裂回数の制限

組織の細胞新生が低下し機能低下する

③ 遺伝子修復エラーによる細胞障害

細胞の遺伝子が障害を受けると、修復機能が働かなくなり細胞や組織の機能低下を招く

④ 老廃物の蓄積による細胞や組織の機能低下

老廃物が細胞外に排泄されずに蓄積されることで機能低下を招く

⑤ ホルモン産生低下による身体の各臓器の機能低下

細胞や組織の恒常性(ホメオスタシス)を維持しているホルモン産生が徐々に低下することで機能も低下する

 

エイジング(老化)

<エイジング(老化)>

 

 

老化とは

生理的老化(予防できない)+病的老化(予防できる)

 

1-2 五臓の異常と症状との関係性    

人の老化には、腎との関係性がみられ、腎臓の機能が低下する「腎虚(じんきょ)」とエイジングをみていきましょう。そのまえに、東洋医学でみる五臓と身体の症状をまとめていきたいと思います。

 

【五臓と症状の関係性】

〔肝:かん〕肝臓:怒りっぽい、筋肉の痙攣、眼の異常、精神不安定

血液の貯留、新陳代謝、情緒機能、さまざまな器官の調節機能、中枢神経系、自律神経系、循環器系などの作用、機能低下により、不眠やイライラなどの症状が現れる。目と密接な関係があり、視力低下や眼性疲労には肝臓が関係する。肝(裏)と胆(表)は肝経を通じて表裏関係とされます。

・新陳代謝のコントロールに関与、栄養を送り、老廃物を回収

・血液量を調整、造血機能に関与する

・筋肉、靭帯、腱、靭帯、爪、眼の機能調節

・自律神経に関与し、情緒安定を保つ

 

〔心:しん〕心臓:不眠、舌先端が赤い、過剰な喜び

循環器系に関係する臓器と機能、気血の流れは精神状態と密接に関係し、精神、意識、思考など心の動きと捉えます。舌には血管が集中しているために、気血の不調は、舌に現れると考えられています。また、心(裏)と小腸(表)は経絡を通じて表裏の関係にあります。

・血液循環系の機能に関与

・精神的な活動、大脳の働きを支配している

・睡眠、心臓、血管系の機能のコントロールをおこなう

 

〔脾:ひ〕脾臓・胃腸:食欲異常、胃腸虚弱、よだれをたらす、手足が黄色い

脾臓の胃腸を示します。消化、吸収など消化器系の機能を示します。血管の保護、内臓下垂を防ぐ作用があります。機能低下では、味覚異常、口内炎、口臭など、口に症状が現れやすい。脾(裏)と胃(表)は経絡を通じて表裏関係にあります。

・消化器系の機能

・血尿、血便、皮下出血、月経血液などをコントロールしています

・全身の肌、筋肉、血管を養う機能を持つ

・胃下垂などの内蔵下垂を防ぐ作用がある

 

〔肺:はい〕肺:呼吸器の症状、皮膚の異常、涙、憂うつ、悲しみ

肺は、呼吸器系の機能、皮膚や鼻、喉、気管支などの働きに関与、体温調節機能や、免疫機能も含みます。肺の不調は、空気の通り道である鼻や喉に現れやすい。肺(裏)と大腸(表)は肺経を通じて表裏関係にあります。

・呼吸器系の機能

・皮膚や鼻、喉、気管支、肺などのコントロール

・感染症などへの免疫機能を持つ

・体液代謝機能(体内の水分調節)

・体温調節機能(毛穴の開閉、発汗に関与)

 

〔腎:じん〕腎臓:老化現象、夜間頻尿、集中力低下、驚き、恐れ

腎は、生命活動や生殖活動と関連しています。人の成長と発育、生殖器系、ホルモン系、中枢神経系、造血系など生命エネルギーの貯蔵庫とされ、排卵や生理などに深く関わりをもつ器官です。腎機能が低下すると、慢性疾患や更年期障害、不妊などに影響します。聴力は腎と関係し、機能低下は耳鳴りなどの症状が現れます。「腎」(裏)と膀胱(表)は表裏関係となり、尿量の調節、排泄など、膀胱の機能に影響を与えます。

・生命エネルギーの貯蔵庫

・成長と発育の促進機能

・排卵や月経、精子、妊娠などの生殖機能に関与

・泌尿器系に関与、水分調節、管理、尿に排泄など

・空気を深く体内に吸い込む納気作用を持つ

 

【腎気と生命力】

腎の気を、腎気といます。腎気の盛衰で人の一生があらわされると言われ、腎気が衰えた状態を腎虚といいます。上記に示したように、内分泌、泌尿器、生殖器、免疫、中枢神経の一部の機能のことを指します。中国最古の医学書「黄帝内経:こうていだいけい」素問・上古天真論編には、人の生命力と腎気との関係性が明記されています。

女性は7の倍数男性は8の倍数で年齢の節目を迎え、身体の変化があらわれるとされています。人の一生が表され90代には「腎気が減少する」いわゆる腎虚の状態とされています。先日のNHKスペシャル「人体」での第1回は「腎臓」でしたね。その意味が何となく理解出来ます。腎の衰えが、人の生命を左右しているようです。

 

五臓の異常と症状

<五臓の異常と症状>

 

1-3 老化は、腎が衰える「腎虚」、腎虚とエイジング

腎虚とは、腎気が衰えている状況です。

腎は、骨、骨髄、脳、耳、髪などに関連し、体内の水分、水液の貯留や排泄機能、ホルモン調節機能をつかさどります。腎気が衰え、腎虚となると、腎がつかさどる器官の機能も低下します。

腎は、生命エネルギーの源、腎虚により、骨の異常による腰痛、思考力の低下、物忘れ、耳鳴りや聴力低下、生殖能力低下、排尿、排便異常、白髪、脱毛などは、これらの症状は、腎虚の場合に現れやすいとされています。加齢に伴うさまざまな症状、エイジングは、腎気の衰えから来ていると考えられます。

 

【腎虚の症状】

  • 下半身の衰え(筋力低下、痛み、しびれ、むくみ)つまずきやすい
  • 腰痛
  • 夜間頻尿
  • 腹証(小腹不仁)下腹部が軟弱無力、圧迫すると指が腹壁に入るような状態
  • 排尿異常(尿の切れが悪い、排尿障害、尿線が細い)
  • 性欲減退
  • 足底煩熱(足底の不快なほてり感)
  • 白内障
  • 耳鳴り、難聴、耳の聞こえが悪い
  • 白髪、脱毛が増えた

その他、疲れやすく、根気がない、足腰がだるい、トイレが近い、足が冷えやすい、小さな文字が見えにくい、皮膚の乾燥など、加齢によると思われるさまざまな身体の不調が腎虚により現れます。

◯ 腎虚には、2つのタイプがあります

・腎陽虚:エネルギー不足、冷えタイプ 腰痛、下半身の症状(脱力、冷え)、排尿トラブル

・腎陰虚:水分、栄養不足、乾燥、熱感タイプ のぼせ、眼精疲労など目の症状

この2つのバランスも大切です。

 

【アンチエイジングへのアプローチ法】

① 腎の強化   :出生時のエネルギー(気)の減少速度を遅らせる

② 脾(胃)の強化:食欲を上げ、消化器機能を上げる、食物エネルギーを摂取力

③ 瘀血の改善  :血液循環の改善

 

【アンチエイジングに使われる漢方薬】

アンチエイジングに使われる漢方薬の考え方として、個人の体力レベルに合わせて薬の種類を決めます。

〔中高年で比較的体力のない人〕

体力を補う働きの生薬が配合された漢方薬が選ばれます。人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、附子(ぶし)、乾姜(かんきょう)、当帰(とうき)、地黄(じおう)、山薬(さんやく)などの複数の生薬を合わせて使います。下薬(主剤)を補強し、副作用を防ぐために上薬を補剤として用いられます。(※下薬、上薬の説明は次の項目でまとめてあります)

〔体力のある人〕

余分な体力や過剰な反応性を抑制する傾向のある生薬を用います。この場合は瀉剤(しゃざい)といわれる下剤を使用します。石膏(せっこう)、大黄(だいおう)、黄連(おうれん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、山梔子(さんしし)などがあげられます。

 

2.生薬の格付け、高齢者の疾患の特徴と漢方の実際

実際に使われる漢方の前に、生薬の格付けについて説明しておきたいとおもいます。

【生薬の格付け】

中国最古の薬物学書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」では、薬を作用で分類しています。上薬(じょうやく)中薬(ちゅうやく)下薬(げやく)と3つの各付けがされています。下薬は、実際に効く薬、上薬や効かなくてもよい薬で、中薬はその中間に位置します。漢方では、薬と薬の調和も役割とされ、他の生薬の副作用を取るだけでも立派なくすりとされています。漢方薬には、4味:4種類以上の生薬が入っているものが多く、この3種類が入り、実際に効く下薬が2種類以上入ります。それぞれの役割をみていきましょう。

〔上薬:命を養う〕

命を養うような生薬、即効性はないが、副作用もほとんどない。軽身益気、不老延年を得る。

身体の治癒力や抵抗力を高め別の薬の副作用を軽減する

おもな生薬:人参、甘草(かんぞう)、菊花(きくか)、五味子(ごみし)、黄耆(おうぎ)、大棗(たいそう)など120品

〔中薬:精を養う〕

精を養う、発病を抑え、虚弱を補う。無毒なもの有毒なものがある。

比較的穏やかな作用で、新陳代謝を活性化する。即効性もある程度期待できる

おもな生薬:当帰(とうき)、柴胡(さいこ)、麻黄(まおう)、芍薬(しゃくやく)、葛根(かっこん)など120品

〔下薬:病を治す〕

病気を治療する。作用は極めて強く、多毒で副作用がある。しばしば副作用をともない、長期連用しない。摂取量、摂取期間に注意が必要です。

おもな生薬:大黄(だいおう)、附子(ぶし)、半夏(はんげ)、桔梗(ききょう)、黄柏(おうばく)、水蛭(すいてつ)、しゃ虫など125品

西洋医学で例えると、上薬は健康食品、中薬は 特定保健用食品、トクホといわれている食品そして、下薬はステロイド、という捉え方だと説明を受けました。漢方にも副作用があるということを認識しておくことが大切です。

 

【高齢者の病気の特徴】

アンチエイジングのためには「腎虚」のケアが求められます。

ひとくちに高齢者と言っても、個人差が大きく、その個人差も加齢により増大します。そのため個々への対応は必須となります。加齢による変化で、免疫力、体力も低下し、同時に多くの症状を抱えている場合も少なくありません。確定診断がつけにくく、病因が不明瞭なものも少なくありません。そのため、根治しにくく症状を取り除くことが目的となります。薬効も人それぞれで、副作用が出やすいため自然に作用するものが必然となります。

まとめると

  1. 個人差を重視した治療であること
  2. 免疫賦活作用があり、体力をつける作用があること
  3. 単一の製剤で多くの薬効が期待できる
  4. 病因、病態があきらかでない場合にも治療が可能である
  5. 自覚症状の改善に優れた効果がある
  6. 作用が自然で、副作用が少ない

 

【漢方投薬の実際】

〔腰痛、坐骨神経〕
① 八味地黄丸[7](はちみじおうがん)

腎虚の代表的な処方です。いわゆる「抗老化薬」といえます。腰痛、夜間頻尿、坐骨神経痛、下肢の虚弱やむくみ、間欠性跛行、冷え、しびれ、頻尿、耳鳴など、中高年に多用されますが、胃腸の弱い人は注意が必要です。

② 牛車腎気丸[107](ごしゃじんきがん)

八味地黄丸に利尿作用のある牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)を加えた処方。八味地黄丸が効かない場合、下肢のしびれ感や、浮腫が強い症例に用いられます。※牛膝は、イノコズチの根、車前子は、オオバコの実です。

③ 桂枝茯苓丸[18](けいしぶくりょうがん)

さまざまな神経痛や関節痛で温めると楽になります。腰仙部(腰椎と仙骨のつなぎ目)の冷感が強く、のぼせや便秘があり、腹壁の緊張が強い人に使用します。

 

〔排尿障害〕
① 八味地黄丸[7](はちみじおうがん)

腰痛、下肢の虚弱や浮腫、夜間頻尿、手足のほてりなど

② 猪苓湯[40](ちょれいとう)

尿意頻回、排尿痛、血尿、残尿感など、膀胱炎症状。膀胱炎を繰り返す場合、猪苓湯合四物湯(猪苓湯に四物湯を加えたもの)[114]

※四物湯[71](しもつとう)は、血の不足した血虚にたいする基本方剤、体力の低下、腹力がなく冷え症、皮膚の乾燥、色つやが悪いなど、女性に多く用いられる。産後・流産後の疲労回復、月経不順、貧血など。

③ 清心蓮子飲[111](せいしんれんしいん)

胃腸が弱く、冷えが原因で膀胱炎を繰り返す

 

〔膝関節痛、関節痛〕
① 防已黄耆湯[20](ぼういおうぎとう)

変形性膝関節症にまず用いてみる漢方、体力中等度以下で、小太りタイプ、疲れやすく、汗のかきやすいタイプ

② 越婢加朮湯[28](えっぴかじゅつとう

関節の腫脹と発熱(急性期)、関節炎で関節液がたまっている、発赤の強い湿疹や皮膚炎など、病気の初期、比較的体力のある人、麻黄を含むため高齢者にはあまり用いない

③ 桂枝加朮附湯[18](ケイシカジュツブトウ)

変形性膝関節症、神経痛など、冷えがあって、体力がない人で、発汗はあるが、尿の出が悪い場合に適する薬。関節の曲げ伸ばしがつらい時。

西洋薬の消炎鎮痛薬、ステロイド薬での副作用などにより治療継続が困難な時、痛みの改善目的で関節リウマチの腫れや痛みに対して使用。

 

〔だるい、疲れやすい〕
① 補中益気湯[41](ほちゅうえっきとう)

疲れやすい、だるいという症状に対して第1選択薬、手足のだるさ、食後の眠気、寝汗など。体力がなく、胃腸虚弱な人の体力回復剤です。全身倦怠感(特に四肢)、食欲不振、気力の低下、顔色不良など。咳、微熱、動悸などの症状がある場合にも使います。

② 十全大補湯[48](じゅうぜんたいほとう)

疲れやすさ、だるさ、皮膚乾燥、貧血、栄養状態が悪いなど

③ 加味帰脾湯[137](かみきひとう)

疲れやすさ、だるさ、体力がなく、全身倦怠感、顔色が悪く貧血傾向、抑うつ気分、元気が出ない、健忘、不眠などの精神不安、神経症状などの訴えをともなう場合

 

〔冷え〕
① 八味地黄丸[7](はちみじおうがん)

おもに高齢者で下半身が冷える

② 麻黄附子細辛湯[127](まおうぶしさいしんとう)

高齢者のかぜの初期症状、顔色が悪く悪寒が強い、新陳代謝が低下した冷え、悪寒や低体温などを伴う

③ 当帰四逆加呉茱萸生姜湯[38](とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

体力がなく、手足の末端の冷え、冬はしもやけになる場合。冷えによる痛み、下腹部痛、腰痛、下痢など、冷え症の女性の月経痛の改善

④ 大建中湯[100](だいけんちゅうとう)

冷えにともなう腹痛、腹部膨満感、胃腸の働きを活発化

 

〔胃腸障害、便秘〕
① 六君子湯[43](りっくんしとう)

体力中等度以下、胃腸が弱く、胃もたれ、食欲低下、胃痛、胃炎、嘔吐、貧血性で手足が冷えやすい、みぞおちがつかえ、疲れやすい

② 安中散[5](あんちゅうさん)

心窩部痛、心窩部が重く痛む、胸やけなど、吐き気、食欲不振などの機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)の症状。やせ型、比較的体力低下、腹部筋力がない、ストレスによる心窩部症状の膨張感、不快感などの神経質な人にも向く

③ 帰脾湯[65](きひとう)

六君子湯や補中益気湯で胃がもたれる場合、体力がない、胃腸虚弱、疲れやすい、食欲不振、気虚、血虚の症状、不眠症や不安、抑うつ気分、貧血、寝汗、動悸などの症状

④ 麻子仁丸[126](ましにんがん)

高齢者の便秘薬、便秘、硬く塊状、兎糞状の便が出る、排便困難、便秘にともなう症状(頭重、のぼせ、湿疹、皮膚炎、ふきでもの、食欲不振)、痔の症状を緩和

 

〔皮膚のかゆみ:老人性掻痒症〕
① 当帰飲子[86](とうきいんし)

カサカサとした皮膚の乾燥によるかゆみがある湿疹や皮膚炎、発赤が淡くてかゆみがある湿疹、高齢者のかゆみに使われる代表的な薬、あまり体力がない、冷え症の人に向く

 

〔こむらがえり〕
① 芍薬甘草湯[68](しゃくやくかんぞうとう)

こむらがえりの特効薬、体力に関わらず使用可、筋肉の急激なけいれんを伴う痛み、腹痛、腰痛など

 

漢方は、副作用もあります。興味持たれた方は、漢方専門医に相談されることをお勧めいたします。

(※上記のカッコ内の数字は、ツムラの製品番号です)

 

3.長寿とは? 東洋医学で考えるアンチエイジング

「人間はおよそ100歳まで生きられるが、

50歳頃には、「五臓」の「肝」が衰え始め、視力が低下してくる。

60歳になると、「心」が衰え始め、笑いが少なくなり、物事を悲観的に考えるようになる。

70歳を過ぎると、「脾」が衰え始め、皮膚のシワが増えてくる。

80歳になると、「肺」が衰え始め、思考が低下してもの忘れがひどくなる。

90歳になると、「腎」が衰え始め、全身の運気が低下する。

100歳になると、すべてが虚となり抜け殻になる」

先にご紹介した中医学の最古の医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」の記述には、人は、100歳まで生きる権利があり、漢方の目的とされています。

 

【生きるということ】

日本の平均寿命は、年々伸び続け、世界一とされています。(女性87.14歳、男性80.98歳 2016年)いわば、人生100歳といわれる時代に突入しようとしています。先月、フレイルサポーターの講座では、100歳まで生き続けなければならないというようなことを言われていました。ここで問題になってくるのが、健康寿命です。ちょっと過激な発言ですが、西洋医学の進歩で、日本人は、簡単には死ねない状況だともいえます。

さまざまな心理関連の学びの中で、「人の死」ということに関しても学び、考えてきています。人それぞれさまざまな思いや考え方があります。亡くなった人との関係性も重要です。先週末にも、生涯学習で「死生学」東北大学総長特命教授 鈴木岩弓教授の講演を拝聴してきました。自分自身の死に方を考えることの大切さ、死に方を考えるということは、自分自身の生き方を考えることに繫がります。今年7月に亡くなられた 日野原重明先生のさまざまな言葉が思い浮かびます。「生き方上手」死生学とは、いかに生きぬくかということに繫がり、人は常に学ぶことができる、死ぬ直前まで成長できると私は思っています。

 

【東洋医学で考える長寿とは】

ここまでお伝えしてきたように、東洋医学でのアンチエイジングは、腎虚の状態を改善させることにあります。最古の医学書では、加齢とともに五臓(肝・心・脾・肺・腎)の働きが徐々に衰え、最後に腎の機能が低下、腎虚となり100歳の寿命を迎えると考えられています。

長寿とは。。。

本来短い寿命を長くするということではない。

本来そなわっているところの生命を十分に発揮させること、天寿を全うすることである。

天寿を全うすることは、それを妨害することを取り除いてやならなければならない

呂氏春秋 呂不韋 著

長寿とはということが書かれた、「呂氏春秋(りょししゅんじゅう)」呂不韋(りょふい)著の意訳、漢方講座で説明戴いた内容を下記に掲載いたします。

 

長寿を得るためには、病的な状態を取り除き、自らの力で生きることにつなげる努力をすること、健康でいながら寿命を全うすることが長寿といえるのだと思います。

健康とはいえない状態、寝たきり状態で、延命されても真の長寿とは言えません。日本では、平均寿命と健康寿命との格差が問題視されています。現実をしっかりと見据えることがいちばん大切に感じられます。自分を含めた家族の状態を見つめ直すことが大切だということです。

 

【若い人にも多い腎虚】

腎虚とは、加齢による変化、老化現象とここまでまとめてきましたが、20代、30代でもこの腎虚の症状がみられる人、若腎虚が最近、増加していると言われています。

どうして若い人の中に老化がみられるのでしょうか。その原因としてあげられるのが、ストレスや食習慣や生活習慣の乱れです。 食物からの栄養素をきちんと得られず、ストレスによる過度の消耗とされます。結果老化促進され、腎虚に陥ることになります。

〔生活の乱れが、食生活の乱れやストレスに〕

暴飲暴食や偏った食生活が招く、胃腸障害、摂取された食物からきちんと栄養が取れていない。その原因として考えられるのは、多忙を理由に、不規則な食事、生活習慣の乱れが、食事時間の乱れとなり、その結果、消化や吸収にも影響してきます。体内時計の乱れは、ホルモンバランスを乱れさせ、体調不良に繫がります。昼夜逆転を仕事によっては余儀なくされる方も多いのかと思います。少なくても、夜遅く、就寝まえの食事を避けるということ、食事時間の見直しだけでもお勧めします。

睡眠時間も短めの人が多いようです。1日の生活リズムは、日の出ともに目覚め、1日の活動を始める。日没とともに、1日の活動を終え、休息の時間に移行します。このバランスが崩れ、睡眠が十分に取れず、身体が必要としている潤いや血液、精といわれる物質がつくられないとされます。就寝時間もホルモンの分泌に影響します。1日のリズムは、身体の中の気の巡りに関係してきます。

〔旬の食材と温度〕

冷たいものを摂りすぎていませんか。冬、暖かい部屋で飲む冷たいビールも美味しいものです。でも、身体にとっては、冷たい飲食物は、胃腸に負担をかけてしまいます。食材も季節感が失われつつあります。食物にも、身体を温める食材と冷やす夏の食材とがあります。体を冷やす作用のある夏野菜(トマト、キュウリ、ナスなど)は、季節に合わせて取ることが望まれます。

〔食品の変化と咀嚼の変化〕

早食いになっていませんか?多忙な毎日で、ゆっくりと食事時間が取れない、柔らかい食物が多く、すぐに飲み込んでしまい、咀嚼回数が減っている、など、早食いが多くなってきているようです。よく噛まないことで、唾液の分泌が減少し、唾液の減少は消化にも影響します。唾液は、消化に対してさまざまな効果があります。胃がんの原因とされるピロリ菌の抑制作用、免疫調整機能、抗酸化作用にも関係しています。

血糖値が上昇し、食欲中枢が機能して、満腹感を認知するまでに20分かかります。早食いは、食べ過ぎの原因にもなります。ゆっくりと食べることで、しっかりと唾液の分泌を促し、食べ過ぎを防ぎ、満腹感も得られます。食事にかける時間も見直してみませんか。

 

<長寿に思う>

私事ですが、昨年91歳の生涯を終えた父は、戒名に「寿」を戴きました。おそらく晩年の父を知った住職の御心を感じました。まさしく父の生涯は、「黄帝内経」に記されたとおりです。70歳代で皮膚の乾燥を日常的に訴え、80歳代でインスリン導入、肺膿瘍で手術を受け、それでも元気に91歳の誕生日を迎え、孫からビールをプレゼントされ嬉しそうにしていました。その後、亡くなる前日には、尿が出なくなりその時点で私はお別れを感じたこと、今でもしっかりと記憶しています。

ことばでは、伝えてもらうことは無かったことですが、さまざまなことを両親から伝えられていたことを実感しています。そのための最後の4ヶ月半だったのだと父に感謝をしています。

 

次回は、ストレスと漢方です。また、ぜひご訪問ください。

 

今日のまとめ 

  • 細胞分裂には限度があり、遺伝子に組み込まれている。老化しない人はいない。
  • 五臓の働きを知り、自分の身体の状態を意識することがエイジングを知ることにつながる。
  • 腎が衰える「腎虚」は、エイジングに関わるさまざまな問題を引き起こす。

 

※参考資料 「漢方講座」東海大学医学部専門診療学系漢方医学 新井 信先生

 

お知らせ

先日、介護職のサポートサイトに「Pure Medical attitude」のブログをご紹介戴けました。こちらのブログで紹介ブログをUP致しました。介護される方のストレス解消法です。よろしければ、「きらッコノート」もぜひお読みください。

 

『今週のテーマblog』

「未病改善と漢方の力」

・§1 今、健康ですか?未病を知る 2017.11.15

・§2 漢方は、日本の伝統医学  2017.11.17

 

『過去のblog』

「守る力と治す力 自然治癒力」2017.11.1~11.10

・§1 生まれながらに持つ力  2017.11.1  ※フレイル

・§2生まれながら持つ免疫力     2017.11.3

・§3 新陳代謝も正しく理解、再生力 2017.11.6

・§4 しなやかな精神力  2017.11.8

・§5 自然治癒力UPで健康力  2017.11.10

 

「疲労を考える」 2017.10.23~2017.10.27

・§1 どうして疲れちゃうの?その原因とは?    2017.10.23

・§2 自律神経と疲労との関係性  2017.10.25

・§3 疲労回復予防につながる食事、睡眠、姿勢 2017.10.17

 

「摂食嚥下障害」 2017.10.16~2017.10.20

・§1 最近、むせることがある!? 誤嚥のサイン  2017.10.16

・§2 自分でできる発見法    2017.10.18

・§3 予防しよう!いつまでも食事を楽しむために 2019.10.20

 

「人の不思議 体内時計」 2017.10.9~

・§1 身体に大切なリズム調節「体内時計」 2017.10.9

・§2 朝食の大切さを知る体内時計  2017.10.11

・§3女性こそは、ホルモンと体内時計    2017.10.13

 

「高齢者が抱える問題」  2017.10.2~2017.10.6

・§1 理解のための問題を知る  2017.10.2

・§2 骨粗しょう症が引き起こす問題   2017.10.4

・§3 高齢期物忘れ 認知症  2017.10.6

 

関連サイト

フリーラジカル Weblio辞書

間欠性跛行   Wikipedia

機能性胃腸症  Wikipedia

漢方専門医   日本東洋医学会

 

※ご意見・ご質問は、こちらからお気軽にどうぞ

みなさまのお声を楽しみにしております。

 

今日も最後までありがとうございました。

 

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